抄録
われわれは人工心臓の小型軽量化を目的として、高速振動流を示す電磁駆動式ポンプ(VEMP)を開発してきた。このポンプは血液に直接高速振動流を与えるため、従来臨床で用いられているローラーポンプ(RP)等の定常流ポンプよりも、膜型人工肺のガス交換能に関して、優れた効果を示す可能性が強い。そこで成山羊を用い、右房脱血・胸部下行大動脈送血にて完全体外循環を行い、VEMPとRPで膜型人工肺のガス交換能に与える影響を比較検討した。その結果、VEMPはRPと比較して酸素加効率および炭酸ガス除去能等の優れたガス交換能を持ち、かつ体外循環経過中の血行動態も臨床上、特に問題のない範囲で経過したことより、VEMPは体外循環用ポンプとして有用であることが示唆された。またガス交換能の改善により、膜型人工肺の小型化軽量化だけでなく、将来完全体内埋め込み式人工心肺の開発への可能性も期待される。