人工臓器
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改質再生セルロース膜のPEG鎖の散漫層が溶質透過係数におよぼす影響
福田 誠金森 敏幸酒井 清孝
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1993 年 22 巻 1 号 p. 47-52

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抄録

再生セルロース膜の表面にpolyethylene glycol(PEG)鎖をグラフトすると、その生体適合性が向上すると報告されている。一方、PEG鎖が形成する散漫層のために、改質再生セルロース膜の溶質透過性能が低下することが危惧される。本研究では迷宮細孔モデルに基づいて改質再生セルロース膜の膜構造モデルを考えると共に、改質再生セルロース膜の膜構造および溶質透過性能に及ぼすPEG鎖の散漫層の影響を検討した。従来の再生セルロース膜(AM-SD)と、SD膜に長さの異なるPEG鎖をグラフトした3種類の改質再生セルロース膜(AM-PC(l), PC(m), PC(s))の膜構造を解析した。SD膜とPC(m)膜およびPC(s)膜の細孔半径は2.8nmであり、膜面開孔率は35%であった。PEG鎖が最も長いPC(l)膜の細孔半径および膜面開孔率は他の膜のそれらよりも小さかった。吸光法で測定したPC(l)膜のビタミンB12の溶質透過係数は他の膜よりも小さく、上記の膜構造の解析結果を反映した。これはPC(l)膜のPEG鎖が膜表面の細孔入口を覆い、溶質の透過に寄与する細孔入口での細孔半径がSD膜のそれより小さかったためであると考える。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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