抄録
炎症応答型インテリジェント薬物送達システムの開発を目的として、薬物リザーバーを有するヒアルロン酸(HA)架橋ゲルを調製し、そのヒドロキシルラジカル(OH・)による分解をin vitroで、炎症に伴う分解をin vivoで検討した。HA架橋ゲルはOH・に特異的に表面から分解し、これによりゲル内に分散させた脂質微粒子(LM)がゲルの分解によって放出された。HA架橋ゲルをラット皮下に埋植したところ、健常時には長期間に亙って安定に存在していたが、外科的侵襲およびカラゲニン肉芽腫炎症に応答して限定分解した。このことから、LMを薬物リザーバーとしてHA架橋ゲル内に導入すると、生体内で炎症の程度に応じた薬物放出制御が可能となった。以上より各種炎症を伴う慢性疾患への局所薬物投与法としての有用性について議論した。