抄録
人工心臓・人工血管等のデバイス表面に、高度の生体適合性の付与が可能であるハイドロゲルの固定化を目的として、光化学反応を用いた新しい表面修飾法の開発を行った。用いた化学反応は、1) 光照射によって分子間で2量化反応を生成するケイ皮酸基の光反応性、2) 光照射によって近傍の炭素と共有結合を形成するフェニルアジド基の光反応性の2種類である。基材上にアジド基を導入した高分子を塗布し、続いてケイ皮酸基を導入した水溶性高分子を塗布した後、光照射すると、水溶性高分子層はゲル化し、同時に、フェニルアジド基の光反応性によって基材表面に化学固定化された。水溶性高分子層内にヘパリンを混合すると光照射によりゲル内に担持された。水膨潤度の高いゲルを固定化すると、in vitroにおいて血小板粘着が抑制され、全血凝固時間が延長した。ヘパリン徐放により血液凝固が阻害された。