抄録
セラチン処理人工血管(ゼルシール)を胸部大動脈瘤手術92例に使用した。瘤の病型は解離29例(A型19, B型10)、非解離63例(AAE・上行14、弓部24、下行15、胸腹部10)で、補助手段として人工心肺を用いた体外循環法60例、遠心ポンプ法32例にて、上行置換14、弓部全置換32、弓部部分置換12、下行置換23、胸腹部置換11を施行した。術後合併症として呼吸不全13、LOS7、ARF6、出血再開胸5、心タンポナーデ5を認め、病院死亡は8例(8.7%)であったが、人工血管と直接関係はなかった。本人工血管はニッテイドダクロンでゼロポロシティのため、縫合が容易であり、人工心肺を用いた症例でも術中出血はほとんどなく、術後の血液漏出も認めず、大動脈手術に有用であった。しかし、術後1~2週間目にゼラチンに対する生体反応と思われる発熱が経過良好例に53%認められ、注意深い観察が必要であった。