抄録
生分解性材料からなる抗血栓性表面を有し, 最終的には自己の新生内膜で置換されることを目指した小口径人工血管(内径3mm)のプロトタイプを考案した. 人工血管の支持体には超極細ポリエステル繊維を用い, これをゼラチン・ヘパリン複合体からなる「人工内膜」と熱変性アルブミンからなる「人工マトリックス」の二層に被覆した. このタンパク質ハイブリッド化人工血管を雑種成犬3頭の両側頸動脈に計6本置換移植した. 4週間後, 6本中5本(83%)が開存していた. 組織学的には, 吻合部新生内膜は人工内膜層を徐々に吸収しながら良好に接着伸張していた. 中央部に残存する人工内膜上には血栓形成はなく, 4週間後も抗血栓性を維持していることが示唆された. 人工マトリックスもほぼ吸収され人工血管壁の器質化が進んでいた. 4週間の置換移植実験では, 当初の設計に見合った機能が発揮されていることが示された.