抄録
生体血管壁に近い階層構造を有するハイブリッド人工血管は、急性期より安定した構造と抗血栓性を発揮できると考えられる。内虜細胞層・平滑筋細胞層よりなる階層型ハイブリッド人工血管(MODEL II)、及び内虜細胞層のみを有するハイブリッド人工血管(MODEL I)を、コラーゲンとデルマタン硫酸の複合ゲルを人工細胞外マトリックスとして用い、ダクロン製人工血管(内径4mm、長さ6cm)内腔にIn vitroで構築した。犬9頭への移植実験(2~12週間)では、グラフトは全て開存した。2週間移植MODELIにおいては内皮下に平滑筋細胞層は認められなかった。2週間移植MODELHにおいては重層平滑筋細胞と、自己産生によると考えられる緻密な細胞外マトリックスより成る、平滑性を有する均一な中膜層が認められた。2週間移撤ODELIの内皮化率は約90%であったのに対し、2週間移植MODEL IIでは100%であった。In vitroで組み込まれた平滑筋細胞は、急性期において安定した中膜層を形成し、内虜細胞の安定化に寄与したと考えられる。