抄録
人工血管に血管壁細胞による階層構造を形成させ, さらに組み込まれた細胞の配向を制御することができればより機能的なグラフトを作成することができると考えられる. この作業仮説に基づき, 生体組織に類似した細胞配向を人工血管に組み込む為の基礎的研究として, In vitroにおける配向細胞層の構築を試みた. I型コラーゲンゲル中に仔牛大動脈由来の平滑筋細胞(SMC)を埋植して作成した”人工中膜モデル”の中央にシリコンチューブを埋め込み, これを加圧拍動させて血管拍動を模倣した力学的ストレスを負荷した. ストレスを負荷しなかったゲル中では多角形のSMCとコラーゲン線維網が無秩序に配列したが, ストレス負荷を行ったゲル中では紡錘型のSMCとコラーゲン線維束がシリコンチューブの周囲に同心円状に配向し, 経時的に増強する傾向を示した. 本研究で作成した”人工中膜モデル”では筋性動脈中膜に類似した構造を再現することができた.