1993 年 22 巻 3 号 p. 713-717
我々が開発しているエレクトロハイドローリック方式補助人工心臓システム(EllVAS)では, シリコンオイルが駆動流体として使用されている. 血液ボンプのダイアフラムを透過するシリコンオイル量を評価し, 生体に及ぼす影響を検討した. In vitro評価の結果, グイアフラムを透過するシリコンオイル量は, 1.75ml/yearと算出された. 成山羊5頭にEHVAS装着し, 血清シリコン濃度(S-Si)を測定するとともに, 血液生化学検査を行い腎・肝に及ぼす影響を検討した. 駆動21日後のS-Siは, 0.57±0.12μg/mlで, 術前値に比して有意な上昇を認めず, 正常成山羊のS-Si範囲内(0.55±0.17μg/ml)であった. 腎・肝機能は良好に保たれ, また組織にシリコンオイルの沈着を認めなかった. 今回の検討では, 透過するシリコンオイルの生体へ及ぼす影響は少ないと考えられたが, EHVASを長期使用する場合, 駆動流体量の減少は血液ポンプ拍出性能に影響することが考えられ, シリコンオイルの透過に対する対策を講ずる必要があると考えられた.