人工臓器
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22 巻, 3 号
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  • 星野 俊一
    1993 年 22 巻 3 号 p. 579
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 岡本 英治, 友田 恭嗣, 山本 克之, 三田村 好矩, 三上 智久
    1993 年 22 巻 3 号 p. 581-586
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    モータ駆動補助人工心臓の長期安定駆動を目的に, セラミック滑り軸受けの応用による人工心臓アクチュエータの改良と、8 bits 1-chip microcomputerを用いた追値制御システムの開発を行い. in vitro耐久試験により評価した. 耐久試験は, 後負荷100mmHg, 拍動数75bpm, ポンプ拍出量4.5l.min(ポンプ出力1Watt)に設定し, 5秒間停止した時点で実験終了とした. 現在までに, 5例の耐久試験を行っており, 最高連続駆動日数75日, 効率(ポンプ出力/モータ入力)21%を得ている. これまでの主な停止原因は, 1)ポリウレタン膜の水分の透過による停止1例, 2)電気系の故障2例, 3)停電のため意図的に止めたもの1例である. この間, ポリウレダン膜アクチュエータ側をシリコンコーティングするなどの改良を行ってはいるが, この耐久試験中のべ170日以上, 機械的異常による停止は起きておらず, 良好な機械的耐久性を示す結果を得ることができた.
  • ―術中術後合併症について―
    村上 泰治, 中山 裕宣, 入江 博之, 紀 幸一, 菅原 英次, 久持 邦和, 甲元 拓志, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1993 年 22 巻 3 号 p. 587-590
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去5年間に開心術後心原性ショック12例に対し, 補助人工心臓(VAD)を用いた。年齢は22から73歳(平均54歳), 男7例, 女5例である。8例は弁置換, 3例は冠動脈バイパス, 1例は心室中隔穿孔閉鎖を行った。補助循環時間は6時間から9日(平均4.2日)であった。10例がVADから離脱し, 6例が生存, 退院した。6例の追跡期間は4から42ヵ月(平均25ヵ月)で, 5例がNYHAI度で, 1例がII度であった。術中, 術後合併症は感染3, 出血4, 腎不全3, 心不全3, 不整脈1, 術中梗塞1, イレウス1であった。病院死に関与する危険因子は, 一変量解析では腎不全, 感染, 心不全であり, 多変量解析では心不全, 腎不全, 左室駆出率であった。
  • 張 〓嶂, 中埜 粛, 島崎 靖久, 加藤 寛, 金香 充範, 宮本 裕治, 大竹 重彰, 松若 良介, 川田 博昭, 松田 暉
    1993 年 22 巻 3 号 p. 591-595
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性循環虚脱などに用いられる経皮的心肺補助法(PCPS), 即ちV-Aバイパス法における左室補助効果を左室容積(LVESV, EDV), 左室収縮末期壁応力(LVESS)と心筋酸素消費量(PVA)の面から検討した。雑種成犬を用いて10分間のglobal ischemiaと15分間の再灌流にて正常心のPRSWを61%に低下させた不全心群(n=6)及び正常心群(n=6)に対し, 一定灌流圧の条件下で定常流V-Aバイバスを行い, バイパス流量を正常心拍出量の40%, 60%, 80%と変化させた。この結果, 正常心群では補助流量の変化に応じて補助前値に比し, LVESV, LVEDV, LVESSとPVAは有意に減少した。一方, 不全心群では、40%及び60%補助流量下ではこれらの減少はみられず, 80%補助流量ではじめて補助前値に比し, LVESVは78%, LVESSは79%, PVAは86%に有意に減少した。従って, 不全心の症例におけるPCPSでは血管拡張剤の併用と80%の補助流量により有効な左室補助効果が期待できると考えられた。
  • 中田 金一, 塩野 元美, 秋山 謙次, 進藤 正二, 小笠原 弘二, 鈴木 修, 井上 龍也, 中沢 直, 三室 治久, 長谷川 隆光, ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 596-599
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は両心補助を必要とする重症心不全に対して、両心房より脱血し、単一ポンプで駆動し肺動脈と膜型肺を介して上行大動脈に送血する回路を考案しブタの心不全、呼吸不全モデルに対し、その効果を実験的に検討した。
    この装置の補助により、中心静脈圧、肺動脈楔入圧は有意に低下し、大動脈圧、総心拍出量も有意に上昇し血行動態の改善がみられ両心補助可能であった。また呼吸不全に対しても有効な補助が可能であった。以上の結果より、今回試作した装置は一台のポンプで両心補助、呼吸補助可能であった、左房脱血により肺動脈楔入圧の低下も良好であり、V-Aバイパスに比べ左室前負荷軽減効果も期待でき、さらに左右の補助率を別々にコントロールできる可能性を持った補助法と考える。
  • 中島 淳博, 福村 文雄, 富永 隆治, 久原 学, 鐘ヶ江 靖夫, 深江 宏治, 宮本 和幸, 安井 久喬, 徳永 皓一
    1993 年 22 巻 3 号 p. 600-604
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬閉胸正常心モデル10頭に対し左心バイパスを行い, 左心補助(LHB)施行時に呼気終末陽圧呼吸(PEEP)が右心機能に及ぼす影響について検討を加えた. 0, 5, 10, 15cm水柱のPEEP負荷に伴い右室拡張末期圧の上昇, 右室拡張末期容積, 収縮末期容積の減少, 後負荷の上昇と心拍出量の低下が認められた. これらのPEEPによる血行動態の変化はLHB施行の有無にかかわらず同様であった. LHB on, offの比較では心拍出量はPEEP 0cm水柱時にはLHB on, offによる差は認めなかったが, PEEP 15cm水柱時にはLHB onによって肺動脈入力部抵抗の15%の上昇と共に(1968±736 dynes・sec・m2/cm5LHB off vs 2254±790dynes・sec・m2/cm5LHB on: p=0.056)心拍出量の20%の有意な低下を認めた. (1.07±0.45L/min, LHB off vs 0.86±0.34L/min, LHB on:p<0.05)PEEP負荷時には左心補助は心拍出量の低下をもたらす可能性が示唆された. よってLHB施行中にはPEEPの適用に対し, より慎重である必要があると考えられた.
  • 佐藤 尚司, 小林 亨, 中埜 粛, 金香 充範, 宮本 裕治, 大竹 重彰, 川田 博昭, 澤芳 樹, 西村 元延, 雨宮 彰, 張 釖嶂 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 605-608
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は大腿動静脈より経皮的に装着できる経皮的左心補助システム(percutaneous left ventricular assist system:PLVAS)を開発し、臨床応用している。PLVASは経心房中隔経由にて左房脱血を行い、遠心ポンプを用いて大腿動脈に送血した。重症心不全6例にPLVASを適用した。PLVASは3-4L/minの流量補助が可能であり、どの症例においても循環動態は著明に改善した。左心補助により心機能の改善が得られた急性心筋梗塞の1例を救命することができた。PLVASの遠心ポンプを用いた定常流補助にIABPを併用し脈圧を得た。中枢側大動脈圧波形においてはIABP駆動によるsystolic unloading、diastolic augmentationが確認され、大腿動脈送血時におけるIABPの有用性が示唆された。PLVAS及びPCPSを用いた経皮的補助循環法は今後重症心不全の治療法として有用であると考えられた。
  • 今西 薫, 井街 宏, 阿部 裕輔, 磯山 隆, 鎮西 恒雄, 満渕 邦彦, 藤正 巖, 須磨 幸蔵
    1993 年 22 巻 3 号 p. 609-614
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは経皮的にアプローチ可能な補助循環装置を研究開発中である。本研究では2つの型のポンプを作成し、ポンプの性能を模擬循環回路により評価した。本補助循環装置は、血液ポンプ、カニューレ、駆動装置からなる。流入、流出弁として、4-5.6mmのJellyfish弁をカニューレの先端と先端から10cmの側壁に装着した。模擬循環回路により、2つの型のポンプの性能を評価し以下の様な結果を得た。前負荷10cmH2O、後負荷30cmH2OcmH2Oの条件で最大流量は0.58l/min(Type 1)、1.19l/min(Type 2)であった。次にType 2のポンプを使用し、後負荷を変化させることにより、最大流量の変化を検討した。結果は後負荷を0、20、40、60mmHgでそれぞれ最大流量は1.34、1.06、0.75、0.57l/minであり、いずれも拍動流を示した。結論として本システムは、経皮的アプローチが可能で、拍動流を発生する圧補助と流量補助が可能な補助循環装置であると考えられた。
  • ―292時間におよぶ長期補助循環の経験―
    村上 厚文, 舟波 誠, 久米 誠人, 小林 聡, 饗場 正宏, 野中 誠, 谷尾 昇, 田中 弘之, 高場 利博
    1993 年 22 巻 3 号 p. 615-619
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    67歳の女性で, 肺高血圧症を伴う重症僧帽弁狭窄症, 巨大左房内血栓, 三尖弁狭窄症および冠動脈狭窄症に対する手術療法後, 重症右心不全に基づくポンプ失調状態に陥り, V-Aバイパスによる292時間におよぶ補助循環を施行した。IABP施行下にECMOを併用したV-Aバイパスで, 送脱血カニューラはdlp社製17Fr, 回路は3/8インチ人工心肺用のものを利用した。BIOMEDICUS社製Biopumpにクラレ社製MENOX AL-4000膜型肺を並列に2個組み込んだ。補助循環開始後, 循環動態は劇的に改善し, 肺機能や肝, 膵, さらに脳波からみた脳循環も良好に保たれていることが第8病日でも確認された。結果的に第13病日に多臓器不全で死亡したが, これは第9病日に離脱を試みたことがきっかけでバイパス依存状態となり結果的に救命には至らなかった。しかしこのシステムは短期間の補助循環または, 補助心臓システムへのブリッジとしても有効な補助手段と考えられた。
  • 西村 元延, 中埜 粛, 金香 充範, 宮本 裕治, 門場 啓司, 川田 博昭, 張 釖嶂, 雨宮 彰, 佐藤 尚司, 松田 暉
    1993 年 22 巻 3 号 p. 620-623
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しく開発された大動脈内バルーンポンプコラートBP-1を教室および関連2施設において7症例に使用し、自動モードにおけるパルーンタイミングと自動ボリューム・ウィーニング機能を中心に検討した。自動モードとマニュアルモードである心電図トリガーモードの両モードにおける血行動態の比較では、心拍出係数、肺動脈楔入圧とも両モード間に有意の差を認めなかった。自動モードにおけるバルーン駆動タイミングは、dicrotic notchとballoon inflateの時間の差およびECGのR波とballoon deflateの時間の差からみるかぎり、そのばらつきはきわめて少なかった。自動ボリューム・ウィーニング中における拡張期のaugmentation圧は時間とともに減少する負の直線相関関係を示した。以上より、コラートBP-1の自動モードにおけるバルーンタイミングは安定しており、自動モード駆動においてもマニュアルモードと同等の心補助効果が得られ、また自動ボリューム・ウィーニングを使用することによりIABPからの無段階的なウィーニングが可能であると考えられた。
  • 太田 稔明, 築部 卓郎, 松田 均, 安宅 啓二, 岡田 昌義
    1993 年 22 巻 3 号 p. 624-627
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弁膜症術後急性期の重症心不全に対するIABPの効果と限界を検討すべく、弁膜症手術症例327例の術後にIABPを使用した症例の術前術中因子、及びその使用成績を検討した。術後IABP使用は25例(7.6%)で、17例が離脱、14例を救命した。術後IABP使用例と非使用例の比較では術前心機能、大動脈遮断時間及び体外循環時間に差はなかった。IABP離脱例と非離脱例の比較では、離脱例では17例中13例がIABP開始後48時間以内の離脱で、うち12例を救命した。一方非離脱の8例はIABP実施後数時間で死亡するか、96時間以上のIABPが行われた。IABP例をその使用原因からみると、明らかな術中の合併症によったものは8例、明確な原因なく術後心不全に陥ったものは17例であった。術中合併症群でのIABP時間は概ね96時間以上と長くしかも救命率も不良であったのに対し、非合併症群では術前低左室機能例(17例中10例)を含めてそのIABP時間も短く、しかも離脱例の全例を救命することができた。
  • 山口 敦司, 井手 博文, 井野 隆史, 安達 秀雄, 水原 章浩, 川人 宏次
    1993 年 22 巻 3 号 p. 628-631
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は, 経皮経大動脈弁的に左室内に挿入し左室流量補助を行う脱血カニューラと, 下行大動脈内で拍動流をつくる大動脈内バルーンとをあわせもつカテーテル(以下ICAC; Integrated cardioassist catheter)の臨床用モデルの評価を行った。脱血管はその全長が約90cm, 内径は14Frのポリウレタン製である。犬の実験においてin vivoのカテーテルの流量特性を検討したところ, 約2L/minの最大流量が確認された。同実験にてヘパリン徐放性材料を用いた本ICACの使用では, 約50単位/kgの少量ヘパリンの投与のみにてACTを150-200secにコントロール可能であった。4時間の装置駆動にて, 血栓塞栓などの合併はなく, 走査電子顕微鏡での観察によると, 表面に血小板の付着を認めるものの, 形態変化やフィブリン網の形成もなく, 良好な抗血栓性が得られた。
  • 手取屋 岳夫, 川筋 道雄, 榊原 直樹, 竹村 博文, 渡辺 洋宇
    1993 年 22 巻 3 号 p. 632-635
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    冠血行再建術において静脈グラフトを用いた上行大動脈―冠動脈バイパス(ACB)に加えて、内胸動脈(ITA)や右胃大網動脈が有茎グラフトとして使用されている。大動脈内バルーンポンプ(IABP)や左心補助人工心臓(LVAD)が各グラフトの血流量に及ぼす影響を検討した。ACB、ITA、LIの高さの下行大動脈―冠動脈バイパス(DAG)を左前下行枝に灌流させる実験モデルを作成し、IABP及びLVAD駆動時のグラフト流量を評価した。補助循環非駆動時の収縮期流量に差はなかったが、拡張期流量はACB; ITA; DAGの順に低下した。IABP下では収縮期流量は非駆動時と変化なく、拡張期流量はACBは非駆動時の83%、ITAは24%、DAGは12%増加した。LVAD下では収縮期流量は非駆動時と変化はなく、拡張期流量はACBは非駆動時の93%、ITAは56%、DAGは46%増加した。動脈グラフトは補助循環による拡張期流量増加が少なく、低左心機能例などではグラフトの血行動態的特性を把握すべきと考えられた。
  • ―溶血減少のためのインペラ形状変更とその効果―
    荒木 賢二, 妙中 義之, 増澤 徹, 井上 和重, 中谷 武嗣, 木下 正之, 赤城 治彦, 馬場 雄造, 松尾 義昭, 榊 雅之, 穴井 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 636-638
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    将来の遠心ポンプによる完全埋め込み型VADやTAHを目指して、長期使用可能な人工心臓用遠心ポンプの開発を行なっている。前モデルであるNCVC-0型はノンシール構造で、血流うっ滞部低減により、耐久性、抗血栓性に優れている。今回、溶血減少のためインペラデザインを変更し、NCVC-1型とした。すなわち、インペラ側面形状、羽根枚数、羽根入口角を平坦型、4枚、30度から山型、6枚、60度に変更した。その結果、in vitro試験にて、駆出能は揚程100mmHg、流量5L/minでの回転数がNCVC-0型2850rpm、NCVC-1型2450rpmであり、新鮮山羊血を用いた溶血係数は、NCVC-0型0.039g/100L、NCVC-1型0.011g/100Lであった。以上より、インペラ形状変更によりポンプ駆出能の向上、溶血減少が得られ、従来からの特徴である優れた耐久性、抗血栓性とも合わせて、長期の循環補助用として有望なポンプと考えられた。
  • 佐藤 眞明, 吉田 哲矢, 林辺 義人, 紺野 進
    1993 年 22 巻 3 号 p. 639-642
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    大動脈内バルーンパンピング(以下IABP)が後負荷を減少させるのに対して, 遠心ポンプは前負荷を減少させ, また遠心ポンプの定常流はIABPにより拍動流化されるため, 両者の併用により相乗効果が得られる。
    1989年から1992年までの3年間に薬物療法およびIABPを用いても心肺離脱困難な10例に対して遠心ポンプを用いて補助循環を行った。補助循環の様式としては, 左心バイパス(以下LHB)が9例, 静―動脈バイパス(以下VAB)が1例であった。対象疾患は, LHBではA-Cバイパス術4例, A-Cバイパス術+大動脈弁置換術, 2弁置換術, 弓部大動脈置換術, 左室破裂および急性心筋梗塞はそれぞれ1例であり, VABでは再々大動脈弁置換術1例であった。LHBでは, 9例中3例が補助循環より離脱でき, そのうち2例が長期生存している。VABでは1例中1例が補助循環より離脱し, 長期生存している。
  • 山崎 健二, 梅津 光生, 小柳 仁, 村山 雄二, 藤本 哲男, 大竹 康夫, 北村 昌也, 田鎖 治, 新浪 博, 秋本 剛秀, 野尻 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 643-649
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    成犬を用いて遠心ポンプ, 軸流ポンプによる左室心尖部脱血, 胸部大動脈送血による左心バイパスモデルを作成し, 心拍動がポンプ流量特性に及ぼす影響を検討した。結果: 1. どちらのポンプにおいても充分なポンプ流量, 左室補助効果(左室仕事量30%以下)を得た。2. totalflow assist時にも左室脈圧はcontrolの90%に保たれ, ポンプ入口部,ポンプ流出部においても脈圧は良く保たれた。3. 収縮期にはLV-AO圧較差が減少するためポンプ流量は増加し, 拡張期にはLV-AO圧較差が増加するためポンプ流量は減少する。すなわち心拍動下では定常回転時においてもポンプの流れは拍動流となった。4. ポンプの流量特性はポンプの締め切り揚程と拡張期LV-AO圧較差の関係により決定される。5. 軸流ポンプは遠心ポンプに比べ圧変化に対する流量変化が少なく, 揚程変動の激しい左室脱血による左心バイパスの流量制御に有利であると考えられる。
  • ―動物実験による2週間の検討―
    井上 和重, 妙中 義之, 荒木 賢二, 増澤 徹, 榊 雅之, 中谷 武嗣, 木下 正之, 赤城 治彦, 馬場 雄造, 穴井 博文, 松尾 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 650-653
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新たに試作した遠心ポンプの血小板・凝固線溶系に及ぼす影響について検討した. 試作ポンプは, 磁気カップリングを用いたノン・シールタイプのインペラ型遠心ポンプである. 実験は, 血液に対する手術の影響を除外するため2期的に行った. まず国循型補助人工心臓を用いて2週間以上左心バイパスを行い, その後, 遠心ポンプに交換し, 2週間以上駆動した. 抗凝血療法としてシロスタゾール30mg/kg/dayを経口投与した. 血小板に関する指標として血小板数, ADPは, 駆動期間中, 変動しなかった. トロンボキサンB2の値は, 交換前値と比較して有意な差は認めなかった. 凝固線溶系に関する指標としてフィブリノーゲン,アンチトロンビン皿は, 交換前値に比べ変化せず, プロトロンビン時間も延長しなかったFDPは, 交換前値, 遠心ポンプ駆動中とも正常上限内で推移した. 以上より試作ポンプは, 血小板・凝固線溶系に対する影響は, 生体の許容範囲内と考えられる.
  • 壁井 信之, 菅野 亮, 桜井 靖久, 土屋 喜一
    1993 年 22 巻 3 号 p. 654-659
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    揺動円板型遠心ポンプの溶血試験を比較対象としてバイオポンプを用いin vitroで行った. ポンプ室内径, 揺動角, 揺動円板がそれぞれ異なる5種類の揺動円板型遠心ポンプを試験回路に接続し, ウシ血液1.5Lを用い, 血液温度37℃, ポンプ流量5L/min, 揚程200mmHgの条件に固定して6時間試験を行い, シアンメトヘモグロビン法にて溶血量の測定を行った. その結果, 溶血量に対するポンプ駆動モータの回転数の影響は, 揺動円板外周部とポンプ血液室内壁とのクリアランスが小さい場合は大きいが, クリアランスがある程度大きくなると無視できるようになること, また揺動円板型遠心ポンプにおける溶血の主な発生原因は, ポンプ室内壁と揺動円板の間を流れる際に受けるせん断力であることが分かった. さらに試験に供したポンプの中ではクリアランス3mmのものが最も溶血量が低くIHも0.04となり十分臨床応用が可能であることが分かった.
  • ―多施設における臨床使用経験―
    古梶 清和, 四津 良平, 川田 志明, 新井 達太, 江口 昭治, 尾本 良三, 小柳 仁, 鈴木 章夫, 高場 利博, 古瀬 彰, 井上 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 660-666
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    8施設30例の胸部大動脈瘤手術に, 補助手段としてバイオポンプを用いた左心バイパスまたは大動脈間バイパスを施行し, その有用性を評価した。バイオポンプによるバイパスで平均1.91±0.45l/minの流量が得られ, 上下肢の平均血圧はバイパス前に比して大きな変動もなく維持できた。術後2例を失ったが, 死因はDIC1例, クモ膜下出血1例でいずれもバイオポンプの使用とは関連がなかった。1例, 術中大量出血のためポンプ流量が維持できず術後腎不全に陥った。本法は, このような大量出血例や長期バイパス時の体温低下という問題があるもののこれらの対策を踏まえ使用すれば, 簡便な操作で上下肢の血行動態を調節でき, またヘパリン使用量も少なくてすむことから出血に対しても有利であり, 従来の人工血管やシャントチューブによる一時的体外バイパス法や部分体外循環法に比し, 有用な補助手段と考えられた。
  • ―人工心臓の制御方法の相違による比較―
    野澤 宏彰, 阿部 裕輔, 満渕 邦彦, 井街 宏, 鎮西 恒雄, 今西 薫, 米澤 卓実, 松浦 弘幸, 磯山 隆, 藤正 巖
    1993 年 22 巻 3 号 p. 667-673
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全人工心臓装着ヤギ9頭において、最初に心拍出量固定制御(以下、固定制御)で人工心臓を駆動し、うち3例においては、これに続いて末梢抵抗に応じて心拍出量を変化させる自動制御(以下、1/R制御)による駆動を行い、各駆動条件下で、糸球体濾過量(以下、GFR)の測定により腎機能の評価を行った。固定制御下ではGFRの低値を認め、左心拍出量・下半身血流量は正常であったが、右心房圧は上昇を示した。1/R制御の開始によりGFRの改善、左心拍出量・下半身血流量の増加、右心房圧の回復を認めた。従って完全人工心臓装着動物における腎機能低下の原因として、人工心臓の不適切な制御により生じた右心房圧の上昇、下半身血流量に対する糸球体への血流量の相対的な減少が示唆された。1/R制御中は、GFRと右心房圧、下半身血流量等との問には特に関係を認めなかったことから、GFRがほぼ生理的範囲にある場合、GFRはこれら循環系パラメータに依存しない可能性があると考えられた。
  • 妙中 義之, 木下 正之, 増澤 徹, 中谷 武嗣, 赤城 治彦, 榊 雅之, 松尾 義昭, 井上 和重, 馬場 雄造, 穴井 博文, 荒木 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 674-678
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全患者の救命と社会復帰のための体内完全埋込型人工心臓システムの主要部となる, エレクトロハイドローリック式全人工心臓の生体内性能を急性動物実験で評価した. この人工心臓では, 胸腔内の血液ポンプを腹壁などの胸腔外の体内に埋めたアクチュエータとしての摩擦ポンプで駆動する. アクチュエータと血液ポンプは曲げ延ばしが可能なステンレス製チューブで結合し, シリコンオイルを駆動媒体としている. 人工心臓を体重50kgと49kgの成山羊2頭に装着して駆動した. なお, 左右の心拍出量差を代償するために心房中隔に欠損孔を設けた. 人工心臓の装着手技は空気圧駆動式のものと同様に容易で, また, 血行動態はほぼ正常範囲に維持された. 本人工心臓は, 装着手技の容易さ, バランスを含めた左右心房圧や充分な心拍出量の維持, などの優れた生体内性能を示し, 体内完全埋込型システムの主要部として適切であると考えられた.
  • 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 林 載鳳, 小浦 義彦, 伊藤 孝, 布袋 裕士, 松島 毅, 村上 博宣, 松 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 679-682
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    フルオロカーボンによって直接駆動する血液ポンプを試作し, 簡易モックによってテストした. 内径4cm, 長さ20cmの塩化ビニルパイプの両端に2個ずつポートを設け, 血液側ポートは流入側および流出側にそれぞれ17mmのビジョロクシャイリーモノストラット人工弁を装着した. フルオロカーボン側ポートは流入側, 流出側ともそれぞれ3ポート電磁弁を経由してフルオロカーボン貯留槽に接続し, 2個の電磁弁の間にポンプを接続する. 電磁弁を切り換えることによって, フルオロカーボンを血液ポンプに流入・流出して血液の拍出・充満を繰り返す. オーバーフロータイプの簡易モックを用いて食塩水を循環し, 電磁血流計で流量を測定した. 90mmHgの後負荷に対し, フルオロカーボンをローラーポンプで循環して0.6L/minの流量が測定された. 拍動数を30bpmから120bpmまで変化したが流量は変化しなかった.
  • 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 磯山 隆, 井街 宏, 今西 薫, 満渕 邦彦, 藤正 巖
    1993 年 22 巻 3 号 p. 683-688
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプの欠点を解決するために、新しい原理の小型容積型連続流血液ポンプ(PDP)を考案した。PDPは、切り欠きを持つ円板と、その切り欠きに噛み合うように仕切りを持ち、仕切りを挟んで流入口と流出口を持つポンプハウジング、円板に摺子木運動を起こさせるためのクランク軸およびクランク軸をシールする一対の膜により構成され、クランク軸の回転運動を円板の摺子木運動に変換し、円板の摺子木運動によって、流入口から流出口へと血液を移動させる容積型ポンプである。三種類のプロトタイプ(PDP25、PDP23、PDP0.4)を作製し、PDPの動作を確認した。その結果、PDPは人工心臓として十分なポンプ出力を持つことがわかり、完全埋込型人工心臓の血液ポンプに応用できる可能性があることがわかった。また、PDPでは、遠心ポンプより低回転で同等のポンプ出力が得られることがわかった。
  • 仁田 新一, 山家 智之, 片平 美明, 薗部 太郎, 永沼 滋, 柿沼 義人, 小林 信一, 田中 元直, 桧山 浩国, 稿本 弘之, 福 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 689-694
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    振動流ポンプ(Vibrating flow pump: VFP)と市販の膜型人工肺によるCPSシステム用ポンプを作成し、健常成山羊を用いた急性動物実験にてその特性を評価した。VFPの駆動部周波数は10Hzを選択し、システムの圧、流量特性とともに循環動態を計測した。このCPSシステムにおいて人工肺をVFPの後方に配置すると著明な脈圧の減少を認めるが、ガス交換能は高速振動流により改善する傾向にあり、駆動周波数に一致した振動流波形を持つ圧波形が得られた。今回試作したシステムの内部には実験後においても血栓形成は認められなかった。従ってVFPは従来型よりもガス交換能に優れ、小型化が可能なCPS用ポンプとして有用である可能性が示唆された。
  • ―易疲労性広背筋による急性実験―
    榊原 直樹, 竹村 博文, 手取屋 岳夫, 川筋 道雄, 渡辺 洋宇
    1993 年 22 巻 3 号 p. 695-699
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓駆動を目的としたリニアー型広背筋によるアクチュエーター(LMA)の開発を試みた。広背筋形態による人工心臓駆動実験(実験1)では木板型LMAを用いた直線型(C型形態)が胸壁圧迫型(A型形態)やロール型(B型形態)と比較して1回拍出仕事量は6.8×106ergと有意に大きかった。直線型広背筋を用いたベローズ型LMAによる人工心臓駆動実験(実験2)では広背筋の剥離法によって人工心臓への出力は変化なく、広背筋停止側を剥離するII型リニアー筋の方が側副血行を温存できるため有利と思われた。小型人工心臓(最大拍出量20ml)駆動用のベローズ型LMAによる実験(実験3)では犬の胸壁にLMAを固定しても人工心臓出力は体外固定法と有意な差はなく、1回拍出仕事量は2.1×106ergと正常犬の左心室のそれより大きかった。本研究からLMAを開発することより完全埋め込み型人工心臓の駆動システムに代用できる可能性が示唆された。
  • ―血行改善期間(vascular delay)の有用性―
    矢野 善己, 磯田 晋, 神 康之, 梶原 博一, 井元 清隆, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1993 年 22 巻 3 号 p. 700-703
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    拡張性不全心の過拡張抑制にはwrapphlg type dynamic cardiomyoplastyが有効と考えられる。この際骨格筋の耐圧性能は等尺性収縮能に置き換えて考えられるが、補助に用いる骨格筋は耐疲労性に問題がある。我々は犬広背筋を用い、連続等尺性収縮時の筋疲労に対する血行改善期間(vascular delay)の影響を検討した。雑種成犬6頭を用い、胸背動静脈以外の血行を遮断後6~12週闇(平均11.3週)経過した広背筋グラフト(VD群)と、対側の作製直後の広背筋グラフト(対照群)について検討した。広背筋の長さが生体長となるよう張力計に接続し、胸背神経を5volt・33Hzのテタヌス刺激で毎分60回刺激し、刺激開始時から3分後までの発生張力を計測した。発生張力は両群とも1分後までは維持されるが、以後減少し3分後には刺激開始時に比べ低値を示した。また3分後には対照群で有意に低値となり、vasclliar defyが等尺性収縮時の耐疲労性向上に有効と考えられた。
  • 緑川 博文, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 渡辺 正明, 佐戸川 弘之, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 高瀬 信弥, ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 704-707
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬10頭を用い, プロプラノロールによる薬剤性心不全下に, 内胸動静脈にて血行再建した遊離広背筋グラフト(I群: 5頭)によるDynamic cardiomyoplasty (DCMP)の有用性を, 有茎広背筋グラフト(II群: 5頭)と比較し, その循環動態の差異を検討した。広背筋刺激により, 両群とも収縮期動脈圧および心拍出量は有意に上昇したが, 両群間に有意差は認められなかった。また広背筋刺激前後における%変化率において, 両群間に統計学的有意差は認められなかったが, 収縮期動脈圧および心拍出量の増加率は, I群がII群に比し高い傾向にあった。遊離広背筋グラフトによるDCMPは,支配神経の切断による骨格筋萎縮や再建した血管の開存性の問題を残しているが, 十分な心補助効果が得られる可能性が示唆された。
  • 織田 禎二, 腰地 孝昭, 宮本 忠臣, 岡本 好史, 伴 敏彦
    1993 年 22 巻 3 号 p. 708-712
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨格筋心室(SMV)の有効駆動には高い前負荷が必要とされているが, 我々の研究によると低い(生理的)前負荷では並列型Dual chamber (DC) SMV(二連銃型SMV)のポンプ機能の方が従来のSingle chamber SMVよりも優れていた。今回はこの並列型DCSMVをさらに直列型のそれと比較した。雑種成犬10頭の左広背筋を用いて内径14mmの円柱状chamberを二個並列に作製しこの両端にそれぞれY字管を接続した。このY字管の四本の脚の部分をそれぞれ別個に遮断あるいは開放することによって駆出の方向の違う二種類の直列型と一種類の並列型DCSMVを機能させた。前負荷15mmHg, 後負荷80mmHgに設定したモック回路での一回拍出量(SV)と一回仕事量(SW)は, 並列型で6.3±0.7ml, 0.31±0.07×106ergsであった。直列型のSVとSWは駆出の方向により変化し, 近位部ポンプ→遠位部ポンプで5.9±0.7ml, 0.25±0.05×106ergs, 遠位部ポンプ→近位部ポンプで4.3±0.6ml, 0.16±0.03×106ergsであった。並列型DCSMVのほうが直列型よりも有意に大きな(P<0.05)SVとSWを発生した。直列型は駆出の方向を変えるとその能力が大きく変化した。
  • 松尾 義昭, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 赤城 治彦, 増澤 徹, 木下 正之, 馬場 雄造, 榊 雅之, 井上 和重, 穴井 博文, 荒木 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 713-717
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々が開発しているエレクトロハイドローリック方式補助人工心臓システム(EllVAS)では, シリコンオイルが駆動流体として使用されている. 血液ボンプのダイアフラムを透過するシリコンオイル量を評価し, 生体に及ぼす影響を検討した. In vitro評価の結果, グイアフラムを透過するシリコンオイル量は, 1.75ml/yearと算出された. 成山羊5頭にEHVAS装着し, 血清シリコン濃度(S-Si)を測定するとともに, 血液生化学検査を行い腎・肝に及ぼす影響を検討した. 駆動21日後のS-Siは, 0.57±0.12μg/mlで, 術前値に比して有意な上昇を認めず, 正常成山羊のS-Si範囲内(0.55±0.17μg/ml)であった. 腎・肝機能は良好に保たれ, また組織にシリコンオイルの沈着を認めなかった. 今回の検討では, 透過するシリコンオイルの生体へ及ぼす影響は少ないと考えられたが, EHVASを長期使用する場合, 駆動流体量の減少は血液ポンプ拍出性能に影響することが考えられ, シリコンオイルの透過に対する対策を講ずる必要があると考えられた.
  • 柿沼 義人, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 井筒 憲司, 小林 信一, 芳賀 洋一, 田中 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 718-723
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    stunned myocardiumに対する左心補助人工心臓(LVAD)の治療的有効性を検討するために、従来われわれは、左心室圧―容量曲線(P-Vcurve)におけるVoが不変と仮定し、Emaxの変化より評価検討を行なってきた。しかし、循環動態の変化に伴いVoが変化する可能性があり、その変化に対する検討が必要と考えられた。そこで今回―過性心筋虚血モデルを作成し、counter-pulsation modeでの補助下で急性左心バイパス実験を行なった。3つの異なった状態において、VoおよびEmaxを実際に求め、検討を加えた。その結果Voの変化はわずかであり、Emaxの変化に比べて軽度であった。したがって、Emaxの経時的変化を捉えるうえで、Voの変化は特に問題とならない程度であり、連続的な心機能の評価法として、本法は有用と考えられた。
  • 橋谷 浩, 吉澤 誠, 竹田 宏, 山家 智之, 仁田 新一
    1993 年 22 巻 3 号 p. 724-729
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全置換型人工心臓を自律神経情報に基づいて制御するための一つの方法として, 阿部らは, 人工心臓の拍出量を末梢血管抵抗の逆数に依存させるような制御方式を提案している. 本研究では, このような制御方式が制御工学的な立場から見て妥当であるかどうかについて, 循環系モデルを用いたディジタル・シミュレーションにより検討した. その結果, 阿部らの制御方式は, その制御パラメータの理論的決定法が示されていないものの, 循環系を2入力-2出力システムであると考えた場合の一種の非干渉化制御方式であるとみなせることを示した.
  • ―逆流防止用バルーン弁付きIABP
    山崎 健二, 梅津 光生, 小柳 仁, 新浪 博, 八田 光弘, 西田 博, 中野 清治, 北村 昌也, 田鎖 治, 橋本 明政, 石原 和 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 730-733
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポンプ作用を持っバルーンとして, 従来のバルーンの末梢側に弁用小バルーンを持つIABPを考案した。このバルーン弁は本体バルーンdeflate時に弁として働き, 末梢側からの逆流を防ぎ, 中枢側の圧を下げ, より後負荷軽減効果を高める作用を持つ。このバルーン弁を持つことによりIABPは, 大動脈弁を流入弁,バルーン弁を流出弁, 胸部大動脈をケーシングとする一つの容積式ポンプと見なすことができる。このバルーン弁は本体バルーンとは完全に独立して制御できるように駆動ケーブルは二連重管になっている。本体バルーンは容量20cc, 弁用バルーンは容量は6ccである。駆動装置は一台で二つのアクチュエーターを持ち二つのバルーンを独立して駆動でき, 同期させた上, 自由にタイミングを設定できる(日本ゼオン社製)。成犬を用いた動物実験ではmain balloonを作動させることにより収縮期圧は160mmHgから150mmHgに低下し, 拡張期圧は125mmHgから175mmHgに増大した。さらにvalve balloonをmain balloonより100msec遅れてdeflateさせることにより, さらに-10mmHgめ収縮期後負荷軽減効果を得た。
  • 榊 雅之, 中谷 武嗣, 荒木 賢二, 妙中 義之, 木下 正之, 赤城 治彦, 増澤 徹, 馬場 雄造, 松尾 義昭, 井上 和重, 穴井 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 734-738
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    試作携帯型骨格筋刺激装置を用いて, 広背筋のpreconditioningおよびCardiomyoplastyを施行し, 急性期における循環補助効果, 特に右心補助効果を正常心にて検討した. 成山羊4頭を用いて左側広背筋の電気的トレーニングを6-8週間行なった後, Cardiomyoplasryを施行し, 広背筋刺激時の心機能を評価した. 広背筋非刺激時と比べ刺激時の収縮期肺動脈圧(26±3mmHg vs 29±3 mmHg), 右心拍出量(5.3±1.4L/min vs 6.0±0.7L/min), 右心室駆出率(37±8%vs 42±8%)は,上昇および増加傾向を示したものの有意差は認めなかった. 実験期間中, 試作骨格筋刺激装置は満足し得る性能を示した.
  • ―とくに拡張期の力学特性について―
    荒木 賢二, 中谷 武嗣, 榊 雅之, 松尾 義昭, 妙中 義之, 木下 正之, 増澤 徹, 赤城 治彦, 馬場 雄造, 井上 和重, 穴井 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 739-742
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    in situ両側広背筋を駆動源とする血液ポンプシステムを試作し、拡張期に必要な力を中心に検討した。ダイアフラム型ポンプの背面にベローズを取付け、両側広背筋の収縮力がケーブルにより伝達され、ベローズの圧縮となりダイアフラムを圧排し血液を駆出する仕組みとした。また、拡張期の血液充満と筋の伸展を補助するための力(DF)を、おもりを用いて付加した。成山羊を川いた急性実験(n=3)を行ない、ポンプはmock回路に接続し、mock回路の前負荷とDFを変えてポンプ流量を測定した。その結果、
    ポンプの最大output powerは0.365Watts(前負荷10mmHg、後負荷80mmHg、DF3kgfにて流量2.35L/min)であり、前負荷が10、20、30mmHgのいずれでも、良好な拍出を得るには2kgf以上のDFが必要であった。また、ケーブルとベローズ装着ポンプを応用した本システムは、骨格筋の直線的収縮力を血液の拍出に変換するシステムとして有望であると考えられた。
  • 湯澤 安宏, 野村 徹, 越地 耕二, 周 英明, 宇都 宮敏男, 丹羽 真一郎, 穴井 博文, 増 澤徹, 妙中 義之, 高野 久輝
    1993 年 22 巻 3 号 p. 743-747
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    コイルの位置ずれに強く、2コイル間の結合の大きい体外結合型経皮コイルを用いた完全埋込型人工心臓駆動用エネルギー伝送システムの成山羊におけるIn vivo評価を行ったので報告する。体内コイル(4回巻)は巻線の一部を皮膚で覆い、直径約30mmのアーチとして成山羊の腹部表面より体外に突起させる。アーチ中央の円形空孔に体外コイル(8回巻)を密着巻きしたフェライトコアを挿入して2コイルを結合させ、エネルギーを伝送する。フェライトコアとして、体内コイルを覆っている皮膚に対して当りのよい円柱状のEC形のもの(W52mm, H48mm, D13mm)を使用した。In vivo測定での結果、エネルギー伝送効率は負荷消費電力が4.5~45Wに対してスイッチング周波数80kHzのとき最大73%(DC to DC)、温度上昇は皮膚表面で平均摂氏3度であった。また、成山羊の運動に左右されることのない極めて安定なエネルギー伝送の持続を確認した。
  • 三田村 好矩, 岡本 英治
    1993 年 22 巻 3 号 p. 748-753
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓駆動に磁性流体アクチュエータを使用する可能性について検討した。磁性流体アクチュエータは、磁性流体に外部より磁界を加えることで直接磁性流体を動かすもので、ベアリンングを必要としない。ガラスU字管中の磁性流体をセメンジュールソレノイドのギャップ中においた。0.346Tの磁束を磁性流体―水の境界面に加えたところ、7.25KPa(54.5mmHg)の圧が得られた。ガラス管のまわりに3個のソレノイドを一定間隔で並べ磁性流体アクチュエータを試作した。ソレノイドを順次往復励磁した。その結果、82.6mL/minの流量が得られた。埋込型人工心臓アクチュエータとして、さらに大きいサイズの磁性流体アクチュエータの研究の必要性、有望性を示唆した。
  • 山家 智之, 仁田 新一, 片平 美明, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 柿沼 義人, 小林 信一, 芳賀 洋一, 井筒 憲司, 田中 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 754-759
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体の血行動態の時系列曲線には低周波領域における周期性変動(揺らぎ)が認められることが知られている。これらの成因について解析を加えるため、生体の循環制御系から独立であり、周期性変動を持たない人工心臓を用いて検討を行なった。自然心臓を持つ循環系との比較のため、両心バイパス方式の完全人工循環を用い、成山羊を用いた慢性動物実験を行なった。その結果、人工心臓のみにて全身の循環を維持した際の血行動態にも、自然心臓を持つ山羊と同様の周波数帯域にMayer wave変動成分及び呼吸性変動成分が認められた。関連度関数及び伝達関数の解析により、Mayer wave変動成分は末梢血管抵抗に依存し、呼吸性変動成分は呼吸運動による肺循環の周期性変動に依存していることが推測された。従って循環動態の時系列曲線における揺らぎは、末梢循環及び肺循環の周期性変動を発振源として発生している可能性が示唆された。
  • 向井 友一郎, 築部 卓郎, MA KASHEM, 岡田 昌義
    1993 年 22 巻 3 号 p. 760-765
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Dynamic cardiomyoplasty(DCMP)の慢性期での左心補助効果をもたらすメカニズムを解析する目的で、骨格筋と心筋との癒着後のDCMP駆動時での左室壁運動を心エコー法にて検討した。長軸断層面ではpostero-lateralからapexが心基部に向かう運動、および短軸断層面での反時計回りの運動が確認された。一方壁運動を定量的に評価する目的でRegional wall motion(RWM)を分析してDCMP駆動時と非駆動時を比較し検討を加えた。左室長軸断層像のRWMではposIero-lateralからapexにかけてのfractional area changc(fac)が非駆動時、平均46.57±24.06%から駆動時、平均64.10±25.76%へと有意に増加し、乳頭筋レベルでの左室短軸断層像RWMでは全周性に有意なfacの増加が得られた。以上よりpostero-lalcralからapexが心基部方向に挙上され、同部を中心とした左室内腔の狭小化、心尖部からみて反時計回りの運動等がDCMPが左心補助効果をもたらすメカニズムであると考えられた。
  • 穴井 博文, 中谷 武嗣, 佐々木 栄作, 妙中 義之, 木下 正之, 赤城 治彦, 増澤 徹, 馬場 雄造, 榊 雅之, 井上 和重, 松 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 766-769
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓の血液ポンプ内インピーダンス計測によるポンプ内容量測定法を川いた人工心臓駆動モニタリングおよび制御装置の実用化へ向けて, 血液抵抗率の経時的変化が本装置に及ぼす影響を同避するために自動校正機構を試作した。インピーダンス法では, 血液抵抗率の変動に対する校正は血液ポンプの完全充満時のインピーダンスを測定することで行われる。したがって一定時間毎にポンプの駆動条件を変更し, ポンプを完全充満させ, その間のインピーダンスの最低値の平均を自動的に求める機構を作成した。自動校正機構は血液抵抗率の変化に対して有効に作動し, インピーダンス法によるポンプ拍出量算出およびfull-fill to full-empty駆動制御を安定して行い得た。
  • 井上 聡巳, 安倍 十三夫, 塚本 勝, 桜田 卓, 田中 利明, 小松 作蔵
    1993 年 22 巻 3 号 p. 770-774
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    CarboMedics弁(CM弁)は、安静時での弁機能はすでに検討されており、良好な結果が得られているが、人工弁の弁機能の評価には運動負荷による圧較差等の測定が必要である。今回我々はCM弁を使用した弁置換症例に対し、運動負荷心エコー法を施行し、弁機能について検討した。1990年4月から1992年7月までのCM弁による弁置換症例84例(104個)のうち、術後に運動負荷心エコー法を実施し得た31例(37個)を対象とした。男女比は18:13で、年齢は29~65才(平均51.4±11才)であった。運動負荷はペダル式エルゴメーターにより仰臥位25watt 3分間で行なった。負荷時の大動脈弁最大圧較差、平均圧較差がそれぞれ50mmHg, 30mmHgをこえた症例は21Aの1例のみであった。僧帽弁位では平均圧較差が10mmHgをこえる症例は認められなかった。SJM弁との比較でも有意差はなく、良好な運動耐用能を示した。
  • 中野 清治, 八巻 文貴, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 小柳 仁
    1993 年 22 巻 3 号 p. 775-779
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    種々の理由により使用を短期間で中止した4種類の機械弁の遠隔成績を, 最近12年間第一流選択としているSt. Jude Medical弁(SJM)と比較した。対象はHall-kaster弁(HK)20例, Qmniscience弁(OS)68例, Bicer-Va]弁(BV)37例, Björk-shileyConvexo-concave弁(CC)28例である。10年間の実測生存率(AS)はHK47.4%, OS76.8%, BV66.7%, CC77.9%でありSJMは84.4%であった。再手術に対する回避率(RF)はHK92.9%, OS89.7%, BV79.9%, CC91.6%でSJMは98.7%であった。手術死亡, 不明突然死, 再手術, 人工弁による合併症に対する回避率(FF)はHK46.6%, OS66.8%, BV58.1%, 68.7%でSJMは82.7%であった。HKとBVはAS, FEがOSはAS, RF, EFが, CCはRF, EFがSJMに比べ有意に劣っていた。従ってこれらの弁の使用を短期間で中止した判断は正しかった。
  • ―SJM弁と生体弁の経年的変化について―
    朝野 晴彦, 横手 祐二, 荻原 正規, 長谷川 和康, 松村 誠, 上田 恵介, 許 俊鋭, 木村 壮介, 尾本 良三
    1993 年 22 巻 3 号 p. 780-784
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位に置換された人工弁の機能評価を行なうために、我々は連続波ドプラ法を応用し、人工弁通過血流のpeak velocity(P. V.), mean velocity(M. V.), pressure half time(P. H. T.)を測定した。症例は88例の僧帽弁人工弁置換例で、使用された人工弁は、St. Jude Medical弁64例、生体弁Hancock弁12例、Carpendar-Edwads弁8例である。左房左室間の圧較差Pressure Gradient(P. G)は簡易Bemoulliの式より、有効弁口面積(M. O. A.)はM. O. A. =220/P. H. T. の式より算出した。
    SJM弁は生体弁に比較して、より低いP. G., M. P. G., P. H. T. を有していた。弁のサイズによる差の検討では、P. G., M. P. G. に関しては、SJM, 生体弁で差は認められなかったが、P. H. Tに関しては、SJM弁において、27mm, 29mmに比較して31mmは有意に低値を示した。経年変化をみると、SJM弁のP. V., M. V., P. H. T. は術後10年でも、明かな変化は認められなかったが、生体弁では術後5年より、P. V., M. V., P. H. T. の上昇を認め、この事項より、弁葉運動の低下が示唆された。たとえ、臨床症状がなくとも、生体弁の硬化、変性が徐々に進行していると考えられた。
  • 高味 良行, 有木 弘, 宮田 義弥, 大宮 孝, 石原 智嘉, 伊藤 敏明
    1993 年 22 巻 3 号 p. 785-788
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術後65症例に連続波およびパルスドップラー心エコー法を施行し、大動脈弁位人工弁の評価法としての連続の式を用いた指標:有効弁口面積(EOA), Doppler velocity index(DVI=V 1max/V 2max), 大動脈弁狭窄率(aortic stenotic ratio(ASR)=EOA/LVOTA=V1 flow integral/V2 flow integral)の有用性について、Bernoulliの式を用いた圧較差(maxPG)と比較し検討した。(1) maxPG, EOAは、弁のサイズに強く影響され、DVI, ASRは、弁のサイズと無関係であった。(2) EOA, DVI, ASRは、maxPGと有意に負の相関を示した。(3) 種々の理由で人工弁を通過する血流量が少ないために、lnaxPGが低く算出され、連続の式の指標との間で不一致を示す例で、人工弁の開放角の低下が示された。(4) 人工弁の機能異常を示唆する指標として、DVI<0.25, ASR<0.27が得られた。以上より大動脈弁位人工弁の機能評価には、影響因子が多いInaxPGよりも、連続の式を用いたDVI, ASRが簡便かつ有用と考えられた。
  • 渡辺 正明, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 高瀬 信弥, ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 789-793
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位にCarbomedics弁を使用して弁置換術を施行した42症例について, 術後約2年以内の遠隔期に体表面(TTE)および経食道心エコー法(TEE)を用い弁機能につき検討した。最大圧較差, 平均圧較差はそれぞれTEEに比しTTEで高値をとる傾向にあったが, 平均圧較差で10mmHgを越える症例はなく, 25mm, 27mmにおいてはTEEとTTE問に正の相関を認めた。有効弁口面積はTTEに比しTEEで大なる傾向がみられ, TEEでは25mm, 2.96cm2, 27mm, 3.24c2, 29mm, 3.64c2と弁サイズのアップとともに増加した。TEEとTTE問に各弁でともに正の相関を認めた。左室流入部における最大流速はほぼ正常範囲内にあり, TEEに比しTTEで速い傾向にあった。人工弁の生理的逆流はカラードプラー法によりTEEのみ検出可能であったが, 逆流面積, 到達距離とも弁サイズに相関しなかった。僧帽弁位に使用したCarbomedics弁の弁機能は満足できるものであり, TEE, TTE両方にて弁機能を評価することが有用と考えられた。
  • 川田 哲嗣, 北村 惣一郎, 河内 寛治, 亀田 陽一, 長谷川 順一, 坂口 秀仁, 辻 毅嗣
    1993 年 22 巻 3 号 p. 794-797
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    くり抜き型monostrut人工弁であるBicer弁の遠隔成績を検討した。1981年12月から1990年12月までに大動脈弁置換術にBicer弁用いた119例を対象とした。fdlow-upは最長10年、696 patient-yearsである。44例で大動脈弁以外の弁に手術操作を加えた。追跡率は97%であった。全例での10年目のactuarial sulvi val rateは85.8%、cardiac event free rateは78.3%、thrombcembdism free rateは96.9%、死亡率は1.7%/Patient-years(%/Pt-yrs)、cardiac eventrateは2.2%/pt-yrs、再手術率は0.43%/pt-yrs、prosthetic valve endocarditis発生率は0.28%/pt-yrsであった。単独大動脈弁置換術ではそれぞれ88.9%、77.5%、98.5%、0.92%/pt-yrs、1.8%/pt-yrs、0.46%/pt-yrs、0.23%/pt-yrsと良好であった。他の大動脈弁位傾斜型機械弁と比較しても術後10年目の成績は遜色ない成績を示した。しかしleaflet escapeという合併症を1例経験しており、経過観察の上でこの点に注意を要すると思われた。
  • 伊藤 敏明, 高木 靖, 平手 裕市, 高味 良行, 宮田 義彌, 石原 智嘉, 阿部 稔雄
    1993 年 22 巻 3 号 p. 798-802
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    名古屋掖済会病院において1987年から1991年の4年間で84例に対しMedtronic-Hall弁を用い弁置換手術を行った。大動脈弁置換(AVR)29例、僧帽弁置換(MVR)40例、大動脈弁、僧帽弁置換(DVR)14例、肺動脈弁置換1例で平均年齢53才であった。手術死亡(病院死亡)は4例、AVR3例(10%)、DVR1例(7%)で83例(98.8%)の患者が追跡可能で平均追跡期間は33ヶ月であった。実測生存率は4年でAVR;76±10%、MVR;70±14%、DVR;93±7%、血栓塞栓症非発生率は4年でAVR;92±5%、MVR;95±4%、DVR;100%であった。弁関連死非発生率は4年でAVR、DVRともに100%、MVR;82±13%であった。
    僧帽弁位で3例のclosed stuck valveを経験したが、手技の改善により解決した。
    溶血は少なく、約1/3の症例でハプトグロビンは正常域にあった。Medtronic-Hall弁による弁置換術の臨床成績は良好であった。
  • ―経食道心臓ドプラー検査による弁機能、弁逆流の評価―
    矢倉 明彦, 平中 俊行, 阪越 信雄, 古谷 保博, 東 輝仁, 山本 忠生
    1993 年 22 巻 3 号 p. 803-806
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位に装着したCarboMedics弁(CM弁)の弁機能に関し、経食道エコー検査(TEE)により評価を試みた。当科でCM弁を用いて僧帽弁置換術を施行した6例を対象とした。11~25ヵ月の追跡期間の間に、いずれの症例も人工弁に由来する合併症は認めず、臨床的には弁機能に問題を認めなかった。術後に施行した経胸壁エコー検査では、Pressure Half Timeは、60~80msec(平均77.5±15.2msec)であった。TEEでは逆流ジェットを、弁輪内で全例に、弁輪中央部で5例に、弁輪内周辺部で4例に、弁輪より外側で2例にそれぞれ認めた。逆流ジェットの弁輪部からの最大到達距離は2.1~3.3cm、逆流ジェットの面積は0.8~2.9cm`であった。CM弁の弁機能評価にTEEは有用であることが推察された。
  • ―使用弁サイズと術後心機能に関する検討―
    合田 俊宏, 大場 淳一, 安田 慶秀, 田辺 達三
    1993 年 22 巻 3 号 p. 807-810
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    AS症例におけるAVR後の心機能を使用弁サイズ毎に検討した。対象は成人AS症例30例で, 年齢は15~87(平均56.5)歳であった。使用したSJM弁は19mm:11例, 21mm:11例, 23mm:7例, 25mm:1例で, 2例に弁輪拡大術を, 1例にパッチ拡大術を合併施行した。術後の心エコー及び心カテーテルの計測値を19mm, 21mm, 23mm, 25mm弁の順に示す。LV-Ao圧較差(mmHg)は35.5±10, 26±11, 14±6, 10と19mmvs23mm(p<0.01), 21mmvs23mm(p<0.05)で有意差があった。FS(%)は29.9±5.5, 33.2±5.5, 31.9±4.0, 35.2と各群共, 術前より改善し各群間の差はなかった。ESWS (kdynes/cm2)は84.2±16.2, 81.4±20.4, 90.2±14.8, 76.6と術前より有意に低下し各群間に差はなかった。CI, PAWPには各群間に差はなかった。NYHA心機能分類では術前平均3.0から術後1.3へ改善し, 19mmと21mmでも同様に改善していた。BSA<1.5m2の症例では19mm弁で充分な心機能と臨床症状の改善を得た。
  • 川田 博昭, 中埜 粛, 島崎 靖久, 門場 啓司, 加藤 寛, 大竹 重彰, 三浦 拓也, 松田 暉
    1993 年 22 巻 3 号 p. 811-815
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴症に対し術中0.6%のglutaraldehydeで6分間処理した自己心膜で作成した一弁付き右室流出路パッチ形成術を行った7例、及び導管内に同処理心膜で弁を作成し右室流出路再建を行った5例の遠隔期の弁機能を、glutaraldehyde非処理一弁付き右室流出路パッチ形成術例7例を対照として検討した。右室流出路パッチ形成術では、術後8ヵ月から3年8ヵ月の遠隔期の肺動脈弁部での圧較差はglutaraldehyde処理の有無にかかわらず平均15mmHg以下、逆流度は3度のものが2例ずつで差はなかったが、弁尖の可動性はglutaraldehyde処理した方がより長期間保たれていた。導管使用例のglutaraldehyde処理自己心膜弁は1例でその機能が最長術後2年9ヵ月まで追跡しえた。0.6%のglutaraldehydeで処理した自己心膜は少なくとも術後約3年までは可動性は保たれていることが多く、肺動脈弁に起因する再手術例もなく、肺動脈弁形成の材料として有用と考えられた。
  • 星野 修一, 今井 康晴, 石原 和明, 沢渡 和男, 竹内 敬昌, 寺田 正次, 三隅 寛恭, 新岡 俊治, 太田 淳, 杉山 喜崇, 大 ...
    1993 年 22 巻 3 号 p. 816-819
    発行日: 1993/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児(15歳未満)における生体弁置換術の遠隔期成績, 特に弁機能不全につき検討した。1975年1月より78年12月までの4年間に当院で生体弁置換術を行った15歳未満症例中, 病院死亡を除く29症例, 30回の弁置換術症例を対象とした。平均手術時年齢は5.5±3.9歳であった。遠隔死亡は4例で, 実測生存率は82.2カ月で83.0±7.9%であった。人工弁合併症は, thromboembolismは1例(0.93%/patient-year), prosthetic valve endocarditisは2例(1.85%/p-y)であった。structural deteriorationは26例に認められ, 25例が再置換術を行った。再弁置換術は遠隔死亡4例を除く26例に, 術後14カ月から82カ月平均3年9カ月後に行われた。予測非再弁置換術の%Freedomは48カ月で52.3%に低下し, 82.2カ月で0%となり生存症例全例が再置換術を必要とし, 成人例に比し早期かつ高率であった。原因は1例は感染弁, 他の25例はstructural deteriorationであった。
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