抄録
Fallot四徴症に対し術中0.6%のglutaraldehydeで6分間処理した自己心膜で作成した一弁付き右室流出路パッチ形成術を行った7例、及び導管内に同処理心膜で弁を作成し右室流出路再建を行った5例の遠隔期の弁機能を、glutaraldehyde非処理一弁付き右室流出路パッチ形成術例7例を対照として検討した。右室流出路パッチ形成術では、術後8ヵ月から3年8ヵ月の遠隔期の肺動脈弁部での圧較差はglutaraldehyde処理の有無にかかわらず平均15mmHg以下、逆流度は3度のものが2例ずつで差はなかったが、弁尖の可動性はglutaraldehyde処理した方がより長期間保たれていた。導管使用例のglutaraldehyde処理自己心膜弁は1例でその機能が最長術後2年9ヵ月まで追跡しえた。0.6%のglutaraldehydeで処理した自己心膜は少なくとも術後約3年までは可動性は保たれていることが多く、肺動脈弁に起因する再手術例もなく、肺動脈弁形成の材料として有用と考えられた。