抄録
ポリエポキシ化合物(PC)処理による生体弁(PCvalve)の抗血栓性を評価した。雑種犬より採取した大動脈弁をPCで架橋した。PCvalveの中枢側及び末梢側に人工血管を縫着してconduitとした。対照としてグルタールアルデヒド(GA)で架橋処理した大動脈弁(GAvalve)を用いて同様のconduitを作製した。これらのconduitを雑種犬に右室-肺動脈バイパスグラフトとして植え込み, 主肺動脈を結紮し, 生存犬を作製した(右心系モデル)(PCvalve:8頭, GAvalve:8頭)。またconduitを左室心尖部-下行大動脈バイパスグラフトとして植え込み, 下行大動脈をその起始部で結紮し, 生存犬を作製した(左心系モデル)(PCvalve:2頭, GA valve:1頭)。右心系モデルでは術後14-37日目に, 左心系モデルでは術後7-20日目に標本を採取した。採取された各弁に備わっている3つの弁葉を個々に肉眼的に観察し血栓付着の有無を評価した。右心系モデルでは統計的有意差をもってPC valveのほうがGA valveよりも血栓付着が軽度であった。左心系のモデルでもPC valveのほうがGAvalveよりも血栓付着が少ない傾向があった。従って, PC valveはGA valveよりも右心系および左心系の両系において抗血栓性が優れている生体弁であることが示唆された。