抄録
人工心肺下に行われた開心術後の凝固線溶系の変動を、分子マーカーを用いて検討した。また、メシル酸ナファモスタット(MN)の術後投与がその変動を抑制するか否かを検討した。対象は当科で開心術を受けた19例である。これを2群に分け、C群(コントロール群)、MN群(MN投与群)とした。MN群では、術後ICUに入室した時点からMNを0.05mg/Kg/hrで2日間投与した。術前および術後1、2、3および7日目に採血し、血中のフィブリノーゲン(FIB)、アンチトロンビンIII(ATIII)、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)、FDP、DDダイマー(DD)、プラスミノーゲン(PLG)、α2プラスミンインヒビター(α2PI)、プラスミン・α2プラスミンインビター複合体(PIC)を測定した。(1)術後7日目までは凝固、線溶とも亢進状態が遷延している。(2)MNのこの量での術後投与は効果が不十分であった。と結論した。