抄録
術前肝ミトコンドリア機能評価と術後肝障害との関連を、肝予備力を評価できるredox tolerance testを術前に行い、その有用性の検討を行った。成人開心術症例23例(弁膜症例15例、CABG症例8例)を対象に、術前経口糖負荷試験を行い、血糖と同時に動脈血中ケトン体比(AKBR)を30分毎に測定し、血糖値の上昇分の和に対するAKBRの上昇分の和の割合を求めredox tolerance index (RTI)とした。重症心不全例や耐糖能異常を示す症例のRTIは低値を示した。術前RTIが0.8以下(I群)の術後総ビリルビンの最高値の平均は2.4±1.5mg/dlに対し、RTIが0.8以上(II群)のそれは1.3±0.8mg/dlで、I群は有意に高値を示した。さらに、I群の術翌朝のAKBRはII群に比べ回復不良であった。これらより、術前RTIが高値を示す場合は術後総ビリルビン上昇する可能性が低く、低値を示す場合は術後定期的にAKBRを測定し、循環管理とともに代謝栄養管理を行う必要があると考える。