抄録
従来、warm blood cardioplegiaの投与は高K+液を、体外循環血で希釈することにより調整されているため、K+の総投与量に限界があり、時間的な制約や確実な心停止が得られないことがある。今回、著者らは人工心肺回路と独立した人工肺を有する心筋保護回路を作成し、左室肥大を伴う大動脈弁置換術(n=6)に15分間のcold-warm法(terminal cardioplegia: TCP)として使用した。灌流液のヘマトクリツト値、K+、pH、およびB. E. は灌流中、有意な変化を示さなかった。心筋酸素消費量は2分では8分、14分に比し、有意に低値であった。終了時の心筋温は25~34℃であった。乳酸摂取率は正の値を、心筋excess lactateは負の値を示し、TCP中は心筋は好気的代謝下にあることが示唆された。6例中4例はTCP終了後自然心拍の再開を認めた。以上より、本システムは安全かつ安定した心灌流法であり、有用な心筋保護法と考えられる。