抄録
親水性化合物と疎水性化合物の共重合体によるミクロ相分離構造は血小板の粘着を抑制する作用のあることが知られている。われわれはミクロ相分離構造に強力なすべり性化合物を混合させたポリマーを補助循環回路に応用し、その抗血栓性の実験的評価を試みた。ブタ4頭を用い、24時間のV-Aバイパスを施行し経時的に血小板数、フィブリノーゲン、フィブリノペプタイドAを測定した。さらに24時間後の回路の内表面を走査電子顕微鏡で観察した。結果はバイパス開始後6時間までは血液マーカーの変動は少なく血小板のチューブ表面への粘着は抑制されていたと考えられた。24時間後の回路内表面の観察では乱流が発生する部位では血栓形成や血小板の活性化の所見を認めたが、送血側の口径の一定な部分には血栓を認めず、血小板の活性化の所見はごく軽度であった。コーティング技術や回路の設計に改良の余地があり、今後さらにすぐれた抗血栓性材料となる可能性がある。