PET代用血管の機能向上を目的とし, 生体由来物質であるゼラチンを基質とする血栓バインダーの分子設計と調製を試みた.温和な条件下でゼラチンに長鎖アルキル基を持つアシル基を導入すると, ゼラチン内の炭化水素鎖の疎水性相互作用の増加により, ゲル網目の構造安定性が向上し, ゲルは化学架橋処理によることなく, より安定なものになることが, 融点および融解のエンタルピー変化の評価から明かになった. PET上にキャストしたゼラチンゲルの表面組成は, 疎水基の導入に反して気相界面には極性基濃縮が起きていることがX線光電子分光法による分析から明かになった. 導入された疎水基は内部に埋没していることが示唆された. 本研究によって, ゼラチンの界面特性および構造安定性が, 適切な化学修飾を行なうことにより制御可能となり, PETと血栓の接着界面に介在する有効なバインダーが開発できたと言える.