抄録
人工血管の内腔側と外側の治癒過程は異なるため、それぞれに要求される細胞反応も異なる。従って内腔側設計と外側設計を区別すれば人工血管により組織適合性を付与することができると考えられる。この設計概念に基づき、コーティング材料として細胞外マトリックス(ECM)に光反応基を導入し、紫外光照射でゲル化を可能にした光反応脚(珪皮酸化コンドロイチン硫酸(CS)とクマリン化ゼラチン(GT))を合成した。In vitroで光ゲル化CS上には血小板は殆ど接着せず、光ゲル化GT上にはECが良く接着、伸展した。ダクロン製人工血管(内径5mm, 長さ5cm)の内腔側にCSを、外側にGTをコーティングしたグラフトの犬への急性期(一週間以内)植え込み実験では、内腔面の光ゲル化CSに覆われた部分には血球成分の粘着は殆どみられず、外側面は線維芽細胞が人工血管線維間隙に良好に侵入していた。合成した光反応性ECMはin vitroと急性期in vivoにおいて、その細胞反応は設計概念に合目的であることが示された。