人工臓器
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体外循環灌流液としてのリン脂質薄膜ヘモグロビン小胞体(NRC)の効果と安全性
薄場 彰三浦 純一遠藤 幸男井上 仁元木 良一緒方 嘉貴坂口 圭介鈴木 一比好上谷 利治
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1994 年 23 巻 3 号 p. 843-848

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抄録

著者らが開発したカプセル化ヘモグロビン“ネオレッドセル(NRC)”は赤血球と比較して粘度が低く、酸素運搬能が高いのが特徴である。NRCはさらに溶血しにくい特徴も合わせもつので犬を用いて7時間の長時間完全体外循環実験を行なった。NRCを充填した群では全末梢血管抵抗が対照の全血充填群の約1/3にすぎず、粘度の低いNRCが循環負荷を軽減したと思われた。また灌流中NRCが運搬した酸素の量は赤血球の運搬した酸素の量とほぼ同一であった。しかし前者の容積は後者の約1/2だったのでNRCの運搬した酸素量は同一容積の赤血球の約2倍と考えられた。またNRC充填群のLDHは対照群より有意に低値で溶血が少なかった。マウスとラットの実験で血管内に投与されたNRCは3日後に肝や脾に蓄積するが、影響は軽度で、7日以内に代謝消失していた。以上NRCは体外循環灌流液として優れ、一週間以内に代謝消失し、安全性が証明された。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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