抄録
自己血輸血に供するため, 膜型血漿分離器を用いた自己血漿貯血(DP)を12例に行った。separatorとしてポリスルフオン膜を用い, 抗凝固剤としてヘパリンを用いた7例(H群)とメシル酸ナフアモスタットを用いた5例(NM群)についてDP施行中の活性化補体・ブラジキニン(BK)産生について検討した。両群ともC3a・C5aの活性化を認めたが, NM群において顕著であった。C4aはほぼ変化がなく, この補体活性化はalternative pathwayを介するものといえた。BK産生に関しては両群とも異常高値を示すことはなかったが, NM群では前値より低値となった。NM単独では補体活性は高度であるが, BK産生を減少させる可能性もあり, donorであり受血者でもある患者の安全性を考慮すれば, 抗凝固剤としてヘパリンとNMの併用も有用ではないかと思われた。