1996 年 25 巻 2 号 p. 286-289
重症心不全例に対する遠心ポンプによる左心バイパス(LHB)施行時の心内外膜微小循環動態と心筋表面の冠状動脈血行動態について3タイプの血流計を用いて検討し、大動脈内バルーンパンピング(IABP)施行時のそれと比較した。ブタ心筋梗塞モデルを作成し、LHB、IABPにてそれぞれ単独補助を行い、左冠状動脈血流速度及び流量、さらに心内外膜組織血流量を経時的に観察した。LHBにより左室拡張末期圧(LVEDP)は有意に低下し、これと共に心内膜組織血流量は有意に増加した。一方IABPは、心外膜に関してはLHBと同程度の血流補助が可能であるが、心内膜に至る血流補助効果は非力であった。心内膜組織血流量とLVEDPは、有意な負の相関を認め、心内膜血流低下を間接的に表す冠血流速波形における収縮期逆流成分はLHBにより低下した。LHBはIABPに勝る左室減圧効果により心内膜組織に至る心臓内微小循環改善効果を発揮することが示された。