抄録
体外循環回路は全身的炎症反応を惹起し、多種の胴器に機能障害という術後合併症を生じさせる。主要な反応系として、キニンーカリクレイン系、凝固系、線溶系からなる接触系と補体系がある。そこで新しい回路として(1)徐放型ヘパリン被覆法で加工した回路(H群)と(2)HEMAとStyreneのブロック共重合体からなるMicrodomain構造に加工した回路(M群)の二種を試作した。内面加工を行なわない従来の回路(C群)を対照として、それらの生体適合性を接触系と補体系の活性化により評価した。血小板数とC5aにおいて有意差は認められなかったが、フィブリノーゲンの減少とC3aの活性化はC群に比しH群とM群において有意に抑制された(P<0.05)。ブラジキニンはM群では増加が抑制される傾向が見られた(P=0.09)。H群とM群はともに凝固系と補体系の活性化を抑制し、さらにM群では接触系の初期段階における活性化も抑制することが期待できる。