人工臓器
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表面グラフト重合によるメディカルデバイス表面の設計
中山 泰秀松田 武久
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1996 年 25 巻 2 号 p. 432-437

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抄録

光照射によりラジカル解離し、光イニファタ(ラジカル重合開始-移動-停止剤)として機能するベンジルN, N-ジエチルジチオカルバメート(BDC)の光反応性を利用して表面グラフト重合を行い、その精密3次元制御について検討した。まず、表面にBDC基を有する光反応性高分子フィルムを作成し、ビニルモノマー存在下でこのフィルム表面に紫外光照射した。ESCAスペクトル分析、水晶発振子マイクロバランス(QCM)と水接触角測定、および原子間力顕微鏡(AFM)観察より、グラフト重合は紫外光照射によってのみ開始され、グラフト量は照射エネルギー(光量と時間)の増加に伴ってほぼ直線的に増加することが示された。顕微鏡観察より、グラフト領域は微細な照射部のみに限定されることが示された。高分子表面のXY面(グラフト領域と密度)、およびZ軸(グラフト鎖長)の表面組成、および物性の制御が可能となった。表面ブロック共重合体やグラフト鎖長の傾斜表面の作成を検討し、表面グラフト重合によるメディカルデバイス表面設計の可能性を示した。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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