抄録
近年, 患者から摘出された機械弁において, 弁の表面壊食が報告され, 原因としてキャビテーションが考えられている. 従来, 人工弁の耐久性に関しては加速耐久試験で評価されてきたが, 表面壊食を対象としたものは殆ど無い。本研究では, 耐久試験機において、弁周辺の管壁のコンプライアンスがディスク表面の壊食に与える影響を調べた. コンプライアンスがないホルダー, 弁流出側にあるもの, 流入・流出両側にあるものを製作し, 600拍/分で15時間の耐久試験を行った. 試験後のディスク表面を観察すると, 何れも流入側の表面に多数のピットが観察された. 流入・流出両側にコンプライアンスを持つ場合のもので明らかにピットの数、直径、深さが増加した。弁周辺にコンプライアンスがあることによってより壊食が進行する場合があることが示唆された. 加速試験で人工弁の表面壊食を評価する場合には, コンプライアンスを含めた構造設計が重要であると考えられる.