抄録
複雑な神経回路網の機能を細胞レベルで解明するために、細胞の電気的活動を多点同時に測定する方法を検討した。21種類の多点電極培養皿(MED)を用いて、ラットの大脳皮質および海馬の細胞培養を行った。その結果、MED上で2週間以上にわたって大脳皮質切片を培養することができた。また、このMEDを用いて細胞の周期的な活動電位を検出することができた。この活動電位は、5mMのMg2+や50μMのAPVの添加によって抑制された。また、1mm2程度の範囲において、多くの細胞はほぼ完全に同期した活動を生じており、培養が進むにつれ、細胞の活動電位の発生周期は短くなった。培養4日目から培養9日目の間にシナプス結合が急激に増大し、その後もシナプス結合は増大することが示唆された。また、この時同時に並列分散的に情報処理を行う神経回路網が、形成されていくものと推察された。