抄録
完全埋込型人工心臓を駆動するための電気的エネルギーを体外から供給する際、経皮的エネルギー伝送(TET)システムが有利である。空芯型コイルを用いた場合、通常、一次側、二次側とも同じ共振周波数となるようにコイルやコンデンサーを選ぶことで電気エネルギーを効率よく負荷に伝送できるとされているが、一次側に駆動電圧が印加された状態で2つのコイルの結合が外れたり二次側が無負荷状態になったりすると、LCR回路のインピーダンスがコイルのほぼ純抵抗成分となって、一種の短絡現象を起こし危険である。そこで、伝送効率の観点からは多少不利ではあるが、二次側共振周波数を一次側より高くし、スイッチング周波数を二次側共振周波数よりも高めにとることによって短絡現象を抑えつつ、装着ずれに対してもエネルギー伝送およびその効率を安定させることができた。また、二次側で20Ωの純抵抗負荷にて十分高い効率で最大40W程度の供給ができた。