抄録
胸腹部大動脈瘤手術時の腹部臓器保護法として導入した, 選択的内臓動脈シャントの回路の工夫と臨床的臓器保護成績を報告する. 98年9月までの手術例47例中腹部分枝遮断を要した40例に, ポンプによる選択的潅流18例, 選択的シャント6例, ポンプ潅流からシャントに移行4例を施行した. 選択的シャントはヘパリン結合の10mmチューブに6mmの側枝を4本設けた専用回路を用い, 体外循環終了後ヘパリンを部分中和し人工血管側枝をinHowとして確立した. この回路は80mmHgの静水圧で12Frバルーンにて280ml/分の丘eeHowが得られた. シャント使用に伴う合併症はなく, 術後肝腎機能は, 独立したポンプにより175±35m1/分/本で潅流した部分体外循環下の症例と比較し遜色ない成績であった. 選択的内臓動脈シャントは, 流量が血行動態依存性で制限があるが, 臓器保護効果は臨床的には充分であった.