抄録
1993年より過去5年間にアルブミン処理人工血管 (ACG) を用いた腹部大動脈領域の血行再建術47例の術後炎症反応について, フィブリン糊でpreclottingしたDacron人工血管使用例 (BionitTM: BN) 6例をコントロールとして比較検討した. ACG群は腹部大動脈瘤 (AAA) 24例 (うち破裂例6例), 閉塞性動脈硬化症 (ASO) 19例, 両者の合併が4例であった. BN群ではAAA1例, ASO5例であった. 明らかな感染を伴った4例を除き術後炎症所見の検討を行った. 体温, 白血球数, CRPを検討したが, 両群間に差は認めなかった. ACG群の1例で13カ月目にYグラフトの左脚が末梢run-off不良のため閉塞したが, 術後グラフト感染, 瘤形成などグラフトに起因する合併症はなかった. ACGは術後炎症反応も少なく, 腹部大動脈領域に使用する人工血管として有用であった.