抄録
1980年代に動物やヒトに埋植された人工弁に壊食ピットが発見されて以来, その原因としてキャビテーションが注目されている.我々は人工弁の加速耐久試験を行い, 弁付近の管壁のコンプライアンスが大きくなるとキャビテーションによる壊食ピット数やピットの直径が増加することを示してきた. 本研究では, 自然心に近い圧力条件で剛体ホルダーとコンプライアンス付加ホルダーを用いてディスクの閉鎖運動および弁近傍の圧力変化を計測した. 計測の結果, コンプライアンス付加ホルダーでは, 剛体ホルダーよりも弁近傍の負圧のピークは小さいが, その持続時間は長くなっていた. 剛体ホルダーでは閉鎖直前の速度が速くなり, 表面壊食も増加することがわかった. 閉鎖直前のディスクの速度は表面壊食に大きな影響を与えると考えられる.