抄録
福島第一原子力発電所事故後の汚染された土壌からの放射性物質(放射性セシウム)の効率的な生物除染法として,市販防虫ネットを活用した陸生藍藻イシクラゲ(Nostoc commune) の栽培による手法を検討した。南相馬市内6か所の土壌上に市販防虫ネットを敷き,その上 でイシクラゲを約30日間栽培した。栽培したイシクラゲを回収し,再度,新たに播種・30日 間栽培・回収する操作を6回反復し(2013年4月~10月),回収したイシクラゲの放射能濃度 と土壌の放射能濃度を測定した。6カ所とも5月から6月と7月から8月の1カ月間栽培したイシクラゲの放射能濃度が高く,放射性セシウム(134Cs+137Cs)のイシクラゲへの移行係数はそれぞれ0.08~0.24と0.08~0.31であった。本調査後の土壌の放射性セシウム濃度は5カ 所で調査前よりも低下していた。これらの結果より,防虫ネットを活用することにより,イシクラゲの飛散を防ぎ,回収を容易にして除染の効率を高めることができ,イシクラゲを生物除染に有効に活用できると考えられた。