抄録
低塩濃度適応に関与する遺伝子について把握するために,近縁種である汽水産スジアオノリ (Ulva prolifera)と海水産ウスバアオノリ(U. linza)を用いて比較RNA-seq解析をおこなっ た。両種サンプルを,海水,汽水,淡水で培養し,海水に対して汽水または淡水で発現が増減 する遺伝子を選出した結果,海水に対し淡水中で発現が上昇した遺伝子はスジアオノリで42個, ウスバアオノリで139個,発現が減少した遺伝子がスジアオノリで93個,ウスバアオノリで51個 選出された。海水と汽水の比較では,スジアオノリで21個,ウスバアオノリで170個の遺伝子の 発現が上昇し,一方,スジアオノリで93個,ウスバアオノリで92個の遺伝子の発現が減少した。 選出された遺伝子について機能解析をおこなうと,両種で,発現が上昇した遺伝子にはDASSと いうイオントランスポーター,発現が減少した遺伝子には細胞膜,細胞接着に関する遺伝子が 含まれていた。スジアオノリについては,発現が上昇した遺伝子の中に細胞壁関連の加水分解 酵素が含まれ,発現が減少した遺伝子の中には脂質代謝に関係する遺伝子が含まれていた。一 方,ウスバアオノリでは,発現が上昇した遺伝子の中で,ヒートショックプロテインが目立っ た。