芸術学論集
Online ISSN : 2435-7227
メタルポイントに適した下地の機械的性質に関する考察
媒材が下地の引っかき硬度と付着性に及ぼす影響に関する分析と考察
浅野 早紀
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2024 年 5 巻 p. 51-60

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抄録

メタルポイントを用いた制作の中で、下地の作成は最も重要な工程の一つである。本論文はメタルポイントに適した下地の状態を明確化し、その科学的根拠に基づく体系化を目指すものである。本論文では、特に媒材の違いが強度に及ぼす影響について実験と考察を行った。

先行研究においてはメタルポイントに適した下地の条件として、描線の濃さ・明瞭さと下地に含まれる顔料のモース硬度への相関へ言及がなされているが、より定量的な表面の硬度についての研究は見られなかった。そこで、メタルポイントに推奨されてきた8種類の水性媒材を選定してそれぞれを用いた下地を作成し、それぞれの下地の機械的性質を専用機器で試験して検証した。本稿ではメタルポイントとの関連が深いと考えられる引っかき硬度試験4 種、塗膜の支持体への付着性4種を機械的性質として取り上げ、検証した。試験機器による測定が可能なものについては、数値化を試みた。

実験結果から、異なる媒材が下地の引っかき硬度及び付着性に及ぼす影響の違いについて考察した。それぞれの下地の引っかき硬度と付着性を比較して考察した結果では、とくにアクリル樹脂エマルションが引っかき硬度の高さ、付着性に優れていると結論付けられた。さらに、実験を行った8種の下地に対してメタルポイントで描画を行ったところ、引っかき硬度と付着性が高い方がより濃く明瞭な描線が得られるということが明らかになった。本研究成果によって、メタルポイントに適した下地の状態の明確化及び科学的な根拠に基づいた体系化をする基盤ができた。

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