2010 年 54 巻 9 号 p. 545-550
ダイヤモンド工具を用いて超硬合金に高精細な切削加工を施すことを最終目標として,本報ではダイヤモンドと超硬合金の摩擦特性について基礎的に検討した.Air,Dry-Air,N2,Arの各雰囲気ガス中で単結晶ダイヤモンドと超硬合金(WC-7%Co,WC-0%Co)との摩擦実験を行い,次の結果を得た.1) 摩擦点温度は130℃程度以下であり,物理的なすり減り摩耗が支配的である.2) Air雰囲気中では超硬合金表面への酸素吸着膜により摩擦係数が低下し,ダイヤモンドと超硬合金の摩耗を共に減少させる.3) WC-7%Co中のCoは固体潤滑剤として作用し,WC-0%Coの場合に比べて摩擦係数やダイヤモンドの摩耗を低下させる.ただし,4) N2ガス雰囲気中では,超硬合金の摩耗が抑制されるのに対しダイヤモンドの摩耗が激しくなる.