従来方法では割断困難な板厚0.1 mm以下のガラスに適した割断方法(亀裂発生制御法)が開発された.まず,スクライブ時に亀裂を発生させないスクライブ痕であるトレンチラインを形成する.その後,トレンチライン近傍にアシストクラックを導入することにより,トレンチラインに沿って亀裂が進展する.トレンチラインに沿った亀裂進展は,アシストクラックを起点とした一方向のみである.本研究では,この現象のメカニズムを明らかにすることを目的とし,スクライブ実験と有限要素法による応力解析を行った.実験では,トレンチラインに沿った亀裂はガラス上面に対し垂直に進展し,逆方向への亀裂は発生するが,トレンチラインから遠ざかる方向へ進展し数10 μm以内で停止していた.応力解析を行い,これらの現象がガラス内部に生じた対称な残留応力場によることを明らかにした.工具の種類,接触角度によってトレンチラインに沿った亀裂進展の方向が反転する現象は,発生するせん断応力の反転により説明できる.
本研究の目的は,プリント配線板の穴あけ加工における逃げ面摩耗,およびマ-ジン摩耗が,加工穴品質に及ぼす影響を明らかにすることである.逃げ面摩耗のみが発生しているドリル,およびマ-ジン摩耗のみが発生しているドリルを用いて,プリント配線板の穴あけ加工を行い,それぞれのドリルが穴位置精度,穴の曲がり,ならびに穴内壁粗さに及ぼす影響を検討する.マ-ジン摩耗は,逃げ面摩耗に比べて穴位置精度,穴の曲がり,および穴内壁粗さの加工穴品質を悪化させる.マ-ジン摩耗が大きくなるに伴い,穴あけ方向に垂直な平面上のリサ-ジュ曲線での切削力が大きくなり,穴の曲がり,および穴位置精度が悪化する.マ-ジン摩耗が発生したドリルを用いた場合は,逆テ-パのドリルマ-ジン部が穴内壁を擦過することで,ガラスクロスに,ほつれが生じる.このため穴内壁でのガラスクロスの突き出し量が大きくなり,穴内壁粗さが悪化する.