2018 年 62 巻 12 号 p. 625-631
一般に,アルミニウムへめっきを施す場合には,亜鉛置換処理と呼ばれる特殊な前処理を適用することが必須とされている.この前処理工程は煩雑であるため,より簡略化できると望ましい.そこで本研究では,アルミニウム表面へめっきを施す際の新たな前処理として,微粒子ピーニング(FPP)を利用した方法を試みた.具体的には,FPPによって金属製の投射材をアルミニウム基材表面へ移着させ,その表面に対し,めっきを施した.種々の投射材を用いてA6061アルミニウム合金基材にFPPを施したのちに,その基材表面へ電解ニッケルめっきを施したところ,めっき皮膜が析出することが認められた.前処理を一切施さないアルミニウム基材へ,同じ条件でのめっきを施した場合には,析出不良となった.このことから,FPPによる前処理の有用性が見出された.めっき分野で汎用される密着性評価法である曲げ試験を行ったところ,アルミニウム基材へ施すFPPに用いる投射材の種類に応じて,めっき皮膜の密着性は異なっていることが明らかになった.炭素鋼粒子やそれに銅めっきを施した粒子を用いてFPPを施した基材へ成膜しためっきは,曲げ試験によってはく離したが,移着させた銅や鉄はニッケルめっき皮膜に対し高い親和性を示している可能性が見出された.