パウダ-ジェットデポジション(PJD)は,常温大気圧環境下で微粒子材料を対象物に高速衝突させて付着させる膜形成手法である.著者らは本手法を用いて,ヒト歯の主成分であるハイドロキシアパタイト(HA)を歯冠に成膜する歯科治療法を推進している.しかし, 純粋なHA膜は明度と隠蔽性に乏しく,PJDの審美歯科治療への応用は実現されていない.そこで本研究では,白色不透明の歯科材料であるZrO2の粒子,およびHA粒子とZrO2粒子で作製した複合粒子の成膜を試み,形成した膜の成膜性と審美性を評価した.前者はHA膜,複合粒子膜,ZrO2膜の順に大きく,単位膜厚における明度はその逆順で大きい結果となり,膜全体では複合粒子膜が最大の明度を有した.また,複合粒子膜においてZrO2が偏りなく層状に存在していることを明らかにした.