砥粒加工学会誌
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バフ研磨技術のデジタル化・見える化と解析
松澤 正明矢内 俊一布引 雅之鳥塚 史郎
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2021 年 65 巻 6 号 p. 315-322

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抄録

手作業が主体のバフ研磨技術は,見よう見まねで技術伝承されてきた.この技術伝承の効率化,短時間化を目的として,バフ研磨技術のデジタル化・見える化を試み,そのデ-タ解析から熟練者と経験者の研磨技術の特徴を調べた.バフ研磨作業に支障をきたさないコンパクトな研磨力計測装置を製作し,それを直接手に持ちバフ研磨作業を行い,研磨3分力の測定を行った.熟練者(信州の名工),経験者(実務経験3年),未経験者の研磨3分力を測定できた.得られた研磨力波形自体を評価するとともに,波形デ-タの周波数解析(フ-リエ解析),摩擦係数の算出を行い,研磨後の面粗度と結びつけることによって,熟練者,経験者の技術の特徴を明らかにした.熟練者と経験者の研磨力は台形波であったが,未経験者は乱れた波形であった.波形の周波数解析の観点からみると,熟練者はバフに対して被研磨物を平行かつ滑らかに移動させていることがわかった.また,熟練者は経験者に比べ多めの研磨剤塗布量で,大きな力で研磨を行い,この研磨方法がより優れた面粗度に結びついていると推定できる.熟練者のデジタルデ-タを学習した未経験者は,短時間でよい研磨力波形を示すようになり,本バフ研磨技術のデジタル化・見える化が,技術伝承の効率化に結びつくと考えられた.

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© 2021 社団法人 砥粒加工学会
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