日本細菌学雑誌
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平成19年黒屋奨学賞受賞論文
口腔バイオフィルム形成に関する分子遺伝学的研究
吉田 明弘
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2007 年 62 巻 2 号 p. 263-269

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抄録
口腔レンサ球菌であるStreptococcus mutans は, ヒトう蝕細菌の1つであり, 口腔内でバイオフィルムを形成することが知られている。まず, スクロースからバイオフィルムを構成する菌体外多糖である, グルカンを合成する酵素グルコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の1つ, gtfB 遺伝子のバイオフィルム中および浮遊細菌での発現について解析した。gtfB 遺伝子はバイオフィルム形成の初期段階, 特にマイクロコロニーを形成する段階で強く発現することが明らかになった。また, バイオフィルムの状態と浮遊細菌の状態を比較するとgtfB 遺伝子はバイオフィルムの状態の方が強く発現することが明らかになった。さらにスクロース非依存的なバイオフィルム形成に関与する遺伝子群について, 変異株ライブラリを用いて解析したところ, com 制御系に関するシグナルペプチドの, 菌体外排出に関与する遺伝子が関与することが明らかになった。さらに, 他のcom 制御系関連遺伝子についても変異株を作製し解析したところ, バイオフィルム形成能の低下が観察された。また, Gタンパクなど環境ストレスを細胞内で伝達するタンパク質もバイオフィルム形成に影響を与えていた。さらに, グラム陽性, 陰性の両方に広く見られるautoinducer-2 (AI-2) を介したクオラムセンシングのバイオフィルム形成への影響を解析したところ, バイオフィルム形成へ関与することが示唆された。そしてAI-2の影響は種特異性が低いものであった。このように, S. mutans のバイオフィルム形成に関する因子として, さまざまなシグナル伝達系の関与が明らかになった。
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© 2007 日本細菌学会
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