日本細菌学雑誌
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平成20年黒屋奨学賞受賞論文
ヘリコバクターピロリの病原性に関する研究
柴山 恵吾
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2008 年 63 巻 2 号 p. 387-390

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抄録
Helicobacter pyloriは胃に持続感染し,胃炎,胃潰瘍,胃癌の発症の原因となる。我々は,H. pyloriが産生する蛋白で胃上皮細胞にアポトーシスを誘導する活性を持つものを精製,同定した。この蛋白はγ-glutamyltranspeptidase(GGT)だった。GGTは分泌蛋白で,菌体外に存在する物質を基質としていた。GGTは,グルタミンとグルタチオンに対して非常に強い加水分解活性を示し,Km値が1 μM以下だった。宿主細胞にとって,環境中のグルタミンとグルタチオンが加水分解により消費される事は,細胞内でそれらを合成するためにATPの消費を課すことになるとともに,グルタチオンの欠乏は,宿主細胞を酸化ストレスにさらすことになる。これらのことは,宿主細胞に対する障害メカニズムの一つと考えられる。一方H. pyloriはグルタミントランスポーターを持たず,細胞外のグルタミンをGGTの働きによりグルタミン酸に加水分解して取り込んでいた。H. pyloriのGGTによる病原性は,菌自身の代謝に必要な酵素が同時に宿主に対して障害性を示すというものだった。
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© 2008 日本細菌学会
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