抄録
細菌は属や種による莢膜やべん毛の有無などを含む詳細な構造の違いはあるが,菌体表層を覆うエンベロープ構造の違いに由来する染色性を指標に,グラム陰性菌と陽性菌に大別されてきた。両者の構造上の大きな違いは,グラム陰性菌には外膜と内膜(細胞質膜),ペリプラズム間隙およびリポ多糖体(LPS)があり,グラム陽性菌には外膜,ペリプラズム間隙やLPSがなくペプチドグリカン量が多いこととされている。しかしながら,グラム染色性により分類しにくい結核菌を含むマイコバクテリウム属細菌については,グラム陰性菌と類似したエンベロープ構造を有する可能性が長年指摘されてきた。近年,電子顕微鏡装置や試料作製技術の進歩と化学構造解析研究の発展に伴い,より詳細な結核菌のエンベロープ構造が明らかとされている。一方で,分子生物学的手法を用いて結核菌エンベロープ各成分の生合成経路,機能や免疫生物活性に関する知見も積み重ねられてきている。本稿では,結核菌エンベロープ構造や成分について最近の知見を中心に,著者らの成績も含めて概説したい。