日本細菌学雑誌
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線毛を介した,セラチアと尿ムチンの凝集反応機構の研究
向野 賢治
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1984 年 39 巻 2 号 p. 85-102

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抄録
日和見感染菌の一つであるセラチアは,ヒトの尿中で凝集するが,これはセラチアの線毛と尿中のムチン(尿ムチン)の反応の結果起る。われわれは,本反応を,血球凝集反応hemagglutination (HA)と同様に,微生物学上重要な反応であると考え,尿ムチン凝集反応urinary mucin agglutination (UMA)と名付けた。本反応の発現機構を明らかにするために,形態学的,生化学的な解析を行い,文献的考察も加えて,次の結論を得た。1) UMAは,D-マンノースおよびその誘導体によつて抑制されることから,これは,線毛がムチン分子中のマンノース残基と反応して起るものと考えられる。したがつて,線毛がマンノース特異的なレクチン活性をもつていることが,UMAをひきおこす一つの必要条件であると考えられる。2)ムチン中のマンノース残基は,中心軸となつているポリペプチド鎖と,らせん形成しているムコ多糖をつなぐ橋渡し糖鎖中にあると考えられるために,線毛がマンノース残基(レセプター)と反応するためには,ムコ多糖分子間の溝に入りこまねばならない。したがつて,入りこむのにじゆうぶんに細い線毛であることが必要であると考えられる。
UMAは,尿路における生体防御機構の一つと考えられ,日和見感染症や結石形成を検討する上にも欠かすことのできない要素(factor)となると思われる。
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