日本細菌学雑誌
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Bordetella 壊死毒の性状と作用
堀口 安彦
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1996 年 51 巻 4 号 p. 963-972

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抄録

百日咳菌 (Bordetella pertussis) に代表される Bordetella 属の細菌は共通して易熱性壊死毒 (Dermonecrotizing toxin, DNT: Heat labile toxin, HLTなどと呼称される) を産生する。DNTはB. pertussis 感染による百日咳の初期症状の発現に関与すると考えられているほか, 獣医学領域ではB. bronchiseptica 感染による, ブタの“鼻曲がり”と呼ばれるブタ萎縮性鼻炎における鼻甲介骨の萎縮消失に関与することが知られている。著者らのグループはDNTによる鼻甲介骨萎縮機構を解明する目的でDNTの作用を解析してきた。その結果, DNTは骨芽細胞系の細胞に作用してその分化を阻害し骨形成に影響を与えることが明らかとなった。さらにDNTは低分子量GTP結合タンパクのRhoに直接作用し, その63残基目のグルタミンを脱アミド化してグルタミン酸に転換し, Rhoの内在性のGTPase活性を低下させることがわかった。GTPase活性の低下によってRhoはGTPを結合した活性型の立体構造をとり続け, その結果下流の経路に正のシグナルを伝達し続ける。このRho依存性のシグナル伝達経路の活性化を介して, DNTの細胞に対する作用が発現すると推察された。

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