日本細菌学雑誌
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51 巻, 4 号
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  • 浜田 茂幸
    1996 年 51 巻 4 号 p. 931-951
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    う蝕の主要な病原因子であるミュータンスレンサ球菌は複数の菌種の総称であり, 血清型からも8型 (aからh型) に分類される。ヒトから分離される菌種は Streptococcus mutans (血清型c/e/f) と Streptococcus sobrinus (同d/g) にほぼ限定され, いくつかの共通の表現型を示す。中でも, 多くの単糖やオリゴ糖からの酸産生, およびスクロースを基質とする不溶性で固表面に付着性のα-グルカンの合成能は, これらの菌種のう蝕誘発能を担うビルレンス因子とみなされる。本研究では特に, グルコシルトランスフェラーゼ (GTase) の分画と精製, 局在および付着促進等の特徴を比較・検討した。両菌種ともに, 水溶性グルカンおよび不溶性グルカンを合成するGTaseが協調的に作用してはじめて生育菌体の強固な付着が生じる。さらに免疫学的, 分子生物学的, 形態学的方法を用いてGTaseとその産物の特徴を明らかにした。ついで, GTaseの機能を特異的に抑制すると, ミュータンスレンサ球菌感染SPFラットにおける実験う蝕が有意に抑制されることを示した。あわせて, ミュータンスレンサ球菌の生態学, 分類学, 菌体成分の化学的性状, GTaseを中心とするビルレンス因子, 動物における実験う蝕モデルの作成とその応用例について述べた。
  • 永浜 政博
    1996 年 51 巻 4 号 p. 953-962
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    D型ウエルシュ菌のε毒素は, 致死, 壊死作用を有するタンパク毒素で, 本菌によるヒツジの腸性中毒症の病原因子と考えられている。本研究では, ε毒素の作用機構解明の手がかりを得るため, ε毒素の in vivo と in vitro における作用, さらに構造と機能について検討した。まず, ε毒素をラットに投与すると末梢血管の収縮による急激な血圧上昇が認められること, さらに本毒素は, in vitro で血管, 回腸などの摘出平滑筋組織を収縮させることを明らかにした。この作用は毒素が神経系にNa+の流入を促進し, その結果, 神経伝達物質が遊離, そしてCa2+チャンネルが活性化されて引き起こされることが判明した。一方, ε毒素は脳組織において1種類のシアロ糖タンパク質に特異的に結合すること, ε毒素の致死活性は中枢のドーパミン (DA) 代謝に影響を与える薬物で阻害されること, 毒素は脳内のDA量を減少させることから, 本毒素は, DA神経系に特異的に作用してDA分泌を促すと推察される。可逆的な化学修飾剤を用いる構造と機能に関するアプローチから, ε毒素分子中のトリプトファンとチロシンの各1残基は毒素の受容体への結合に, そしてヒスチジン1残基は作用発現に関与していることが明らかとなった。本毒素は, 神経系に作用して神経興奮を引き起こす神経毒素の一つであると考えられる。
  • 堀口 安彦
    1996 年 51 巻 4 号 p. 963-972
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    百日咳菌 (Bordetella pertussis) に代表される Bordetella 属の細菌は共通して易熱性壊死毒 (Dermonecrotizing toxin, DNT: Heat labile toxin, HLTなどと呼称される) を産生する。DNTはB. pertussis 感染による百日咳の初期症状の発現に関与すると考えられているほか, 獣医学領域ではB. bronchiseptica 感染による, ブタの“鼻曲がり”と呼ばれるブタ萎縮性鼻炎における鼻甲介骨の萎縮消失に関与することが知られている。著者らのグループはDNTによる鼻甲介骨萎縮機構を解明する目的でDNTの作用を解析してきた。その結果, DNTは骨芽細胞系の細胞に作用してその分化を阻害し骨形成に影響を与えることが明らかとなった。さらにDNTは低分子量GTP結合タンパクのRhoに直接作用し, その63残基目のグルタミンを脱アミド化してグルタミン酸に転換し, Rhoの内在性のGTPase活性を低下させることがわかった。GTPase活性の低下によってRhoはGTPを結合した活性型の立体構造をとり続け, その結果下流の経路に正のシグナルを伝達し続ける。このRho依存性のシグナル伝達経路の活性化を介して, DNTの細胞に対する作用が発現すると推察された。
  • 吉田 博明
    1996 年 51 巻 4 号 p. 973-992
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キノロン系抗菌剤の作用に対し, 細菌は菌体内のキノロン濃度を低下させる変異と標的分子の変異によって耐性を獲得する。大腸菌では菌体内キノロン濃度低下のメカニズムとして, ポーリンタンパク質の減少による菌体内への薬剤透過性低下, ならびに菌体外への薬剤排出亢進の両者が関与することが判明している。緑膿菌の場合も, 薬剤の排出亢進が関わっている。グラム陽性菌においては, 内膜に存在する排出タンパク質の増加により, キノロンの排出が亢進される。細菌はこのようにして標的分子に作用する菌体内キノロン量を減少させるとともに, 標的分子であるDNAジャイレースならびにDNAトポイソメラーゼIVの変異を起こし, キノロン親和性を低下させる。両酵素はアミノ酸相同性が高く, 変異の位置と種類も類似しており, 変異によるキノロン耐性獲得のメカニズムは同様であると推測される。しかし, 両酵素の薬剤感受性は菌種によって異なり, 感受性の高い酵素が一次標的になり, 低い酵素は二次標的になる。これらの変異が重複すると菌はキノロン高度耐性を獲得すると考えられる。
  • 安形 則雄, 太田 美智男
    1996 年 51 巻 4 号 p. 993-1002
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    嘔吐および下痢を主症状とする2つのタイプに区別される Bacillus cereus による食中毒は, それぞれ本菌が産生する菌体外毒素によって引き起こされる。このうち嘔吐毒素は, 最近その本体が精製され, 構造や毒素の性状が明らかになってきた。これに対し現在までの下痢毒素についての研究では, 本体であるタンパクの分子量や活性などさまざまであり, 本菌が複数の種類の下痢毒素を産生している可能性も考えられる。本稿では, B. cereus が産生する食中毒原性毒素の研究の到達点と問題点を紹介する。
  • 私の電子顕微鏡研究の軌跡
    保坂 康弘
    1996 年 51 巻 4 号 p. 1003-1013
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 柳原 保武, 増澤 俊幸
    1996 年 51 巻 4 号 p. 1015-1024
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • ストレス蛋白質は病原因子か?
    山本 友子
    1996 年 51 巻 4 号 p. 1025-1036
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 竹田 多惠, 吉野 健一, Thandavarayan RAMAMURTHY, 内田 寛, 松田 枝里子, Amit PAL
    1996 年 51 巻 4 号 p. 1037-1042
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 諸富 正己, 境谷 有希子, 佐藤 美紀子, 高橋 琢也, 牧野 孝
    1996 年 51 巻 4 号 p. 1043-1047
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    通常培地成分として用いるペプトン (Bacto Peptone, Difco) に, 胆汁末が由来と考えられる抱合型胆汁酸を主とする胆汁酸の混入が認められた。ペプトン濃度を2%とした場合, 培地中の総胆汁酸濃度は200μM以上となり, 通常の胆汁酸代謝実験で培地に添加する胆汁酸濃度より高くなった。特に細菌の7α-デヒドロキシラーゼ活性を調べる実験では, 脱抱合によって生じた2次胆汁酸を, 7α-デヒドロキシラーゼ活性による1次胆汁酸からの生成と見誤る恐れがあった。胆汁酸は菌の増殖ばかりではなく, 様々な代謝活性に影響を与える可能性があるのでこのような培地成分を用いるときは注意を要する。
  • 富谷 義徳, 関 啓子
    1996 年 51 巻 4 号 p. 1049-1053
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    食菌プラーク法は貪食機能を中心とした白血球の機能を解析する際に, 従来の液相法などにはない特異的な有用性を有する。本法はその操作中に無菌的な手技を必要とせず, また特別な器具を用いることなく施行できるきわめて簡便な方法であり, しかも短時間で結果が得られる。原法では貪食の対象として Staphylococcus aureus Cowan I 株が専ら用いられていたが, 臨床的にはグラム陰性菌を白血球による貪食の対象として検討したい場合もしばしばある。しかしながらグラム陰性菌ではプラスチックディッシュへの付着が不良なため, これまで明瞭な食菌プラーク像が得られなかった。そこで Pseudomonas aeruginosa, Escherichia coli および Serratia marcescens をプラスチックディッシュに付着させる条件を検討し, P. aeruginosa および E. coli を用いて明瞭な食菌プラーク像を得ることができた。E. coli を用いた時のプラークは S. aureus でのプラークとほぼ同様に円形であったが, P. aeruginosa を用いた時のプラークは細長く, S. aureus でのプラークとは明らかに異なった形態であった。
  • 1996 年 51 巻 4 号 p. 1055-1089
    発行日: 1996/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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