日本細菌学雑誌
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細菌におけるキノロン耐性メカニズム
吉田 博明
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1996 年 51 巻 4 号 p. 973-992

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抄録

キノロン系抗菌剤の作用に対し, 細菌は菌体内のキノロン濃度を低下させる変異と標的分子の変異によって耐性を獲得する。大腸菌では菌体内キノロン濃度低下のメカニズムとして, ポーリンタンパク質の減少による菌体内への薬剤透過性低下, ならびに菌体外への薬剤排出亢進の両者が関与することが判明している。緑膿菌の場合も, 薬剤の排出亢進が関わっている。グラム陽性菌においては, 内膜に存在する排出タンパク質の増加により, キノロンの排出が亢進される。細菌はこのようにして標的分子に作用する菌体内キノロン量を減少させるとともに, 標的分子であるDNAジャイレースならびにDNAトポイソメラーゼIVの変異を起こし, キノロン親和性を低下させる。両酵素はアミノ酸相同性が高く, 変異の位置と種類も類似しており, 変異によるキノロン耐性獲得のメカニズムは同様であると推測される。しかし, 両酵素の薬剤感受性は菌種によって異なり, 感受性の高い酵素が一次標的になり, 低い酵素は二次標的になる。これらの変異が重複すると菌はキノロン高度耐性を獲得すると考えられる。

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