嘔吐および下痢を主症状とする2つのタイプに区別される Bacillus cereus による食中毒は, それぞれ本菌が産生する菌体外毒素によって引き起こされる。このうち嘔吐毒素は, 最近その本体が精製され, 構造や毒素の性状が明らかになってきた。これに対し現在までの下痢毒素についての研究では, 本体であるタンパクの分子量や活性などさまざまであり, 本菌が複数の種類の下痢毒素を産生している可能性も考えられる。本稿では, B. cereus が産生する食中毒原性毒素の研究の到達点と問題点を紹介する。