日本細菌学雑誌
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黄色ブドウ球菌の新規細胞壁合成関連遺伝子の同定および解析
小松澤 均
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2006 年 61 巻 3 号 p. 305-315

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抄録

黄色ブドウ球菌はヒトに種々の疾患を引き起こす代表的な病原菌の一つである。この菌による感染症の治療には化学療法剤が使用されるが, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の出現によりその治療が困難な状況になっている。MRSAの耐性因子はmecAであることはすでに明らかであるが, 臨床分離株におけるメチシリン耐性度の多様性は説明がついていない。さらに, 今日ではMRSAの治療薬として有効であるバンコマイシンに対して耐性あるいは低感受性菌の報告もなされている。現在のところ, バンコマイシン耐性あるいは低感受性菌が蔓延している状況ではないが, MRSAのメチシリンやバンコマイシンに対する多様な応答についての解析はMRSAの薬剤への適応機構の解明につながることが考えられる。これまでに, 多くの研究がなされ, メチシリンあるいはバンコマイシン感受性に影響を及ぼす因子が同定されている。それらの多くは細胞壁合成関連因子あるいは細胞壁合成系に影響を及ぼす因子であった。今回, 私の同定した新規細胞壁合成関連遺伝子を中心としてメチシリンおよびバンコマイシン感受性に影響を及ぼす因子について概説したい。

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