抄録
DNAマーカーによるリンドウの花色簡易識別手法の開発を行った.ササリンドウ(Gentiana scabra)のピンク花品種は,フラボノイド3',5'-水酸化酵素(F3'5'H)遺伝子にレトロトランスポゾンGsTRIM1が挿入された機能欠損変異であることが分かっている.F3'5'H遺伝子の本変異について,PCR法によるSequence-Tagged Site(STS)マーカー化を試みたところ,GsTRIM1挿入領域の有無が検出できる共優性マーカーが作出された.そこで,ササリンドウ系青花育成系統とピンク花育成系統間で交配したF1集団を用いて遺伝解析を行ったところ,ピンク花形質は1遺伝子座の変異に支配されていることが確認された.また,179個体の交配F1集団においてDNAマーカーによる遺伝子型と開花した花色は完全に一致していた.リンドウは,播種から開花まで長期間を要するため,今回開発した花色識別DNAマーカーを利用することで,育成集団の早期選抜や栽培にかかる労力およびコストの軽減,交雑親の選定や品種識別への応用が期待される.