育種学研究
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最新号
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総説
  • 小出 陽平, 曵地 究, 三浦 誠一朗, 田口 みなみ, 徳山 芳樹
    原稿種別: 総説
    2026 年28 巻1 号 p. 3-11
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/23
    [早期公開] 公開日: 2026/04/14
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    近年のコンピューターシミュレーション技術の発達により,発生過程の植物器官の形状をシミュレートすることができるようになりつつある.このような技術は植物育種学研究において,どのような貢献をするだろうか? 本総説では,まず,植物の器官成長モデリングと呼ばれる技術について,基礎となる概念を紹介する.特に,植物における相対成長率,成長の方向を決める軸性,器官の変形を生み出す軋轢について,最近の研究例とともに概説する.さらに,本技術の植物育種学への応用可能性を論ずる.

原著(研究論文)
  • 田中 凌慧, 山田 哲也, 山本 英司, 鐘ヶ江 弘美
    原稿種別: 原著(研究論文)
    2026 年28 巻1 号 p. 12-25
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/23
    [早期公開] 公開日: 2026/04/14
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    電子付録

    交配組合せの選択は,交雑育種の成否に直結する.しかし,優れた交配組合せを選定するには,表現型データやゲノムデータをはじめとする多種多様な育種関連データを統合的に解析しなければならない.そこで本研究では,育種関連データの活用を推進するため,品種育成試験データや遺伝子ハプロタイプデータを解析・統合して得られる「品種特性情報」と,全ゲノムDNA多型データを用いた「後代予測」の結果を表示・検索・可視化できる「育種支援システム」を開発した.品種・系統ごとに表現型や遺伝子ハプロタイプを整理した「品種特性情報」を参照することで,それぞれの系統がどのような遺伝子ハプロタイプを保有し,どのような形質を示すかを簡単に調べられる.この「品種特性情報」では,複数の年次・環境・栽培条件からなる品種育成試験データに線形混合モデルを当てはめ,品種・系統の育種価(遺伝的能力)を推定することで,異なる年次や栽培条件で測定された表現型値に基づき,系統間の遺伝的特性を比較できるようにした.また,ゲノミック予測に基づく量的形質の後代分離予測結果と,両親の保有する遺伝子ハプロタイプから導かれる各遺伝子座の分離に関する情報を集約した「後代分離」を参照することで,交配組合せごとの特性を調べられる.育種支援システムの絞り込みや並べ替え機能を使うことで,成熟期が大きく分離してしまう組合せを除外した上で,必要な病害抵抗性を持ち,かつ多収な交配組合せをリストアップするといった操作が簡単に実施できるようになった.このように,育種支援システムを活用することで,品種・系統の,また,それらの交配によって得られる後代分離世代の,データに基づく長所や短所を把握することができる.育種担当者が圃場で培った経験知に,データに基づく評価が追加されることで,優れた交配組合せを選択できると期待される.

  • 日浦 聡子, 吉田 モモ, 奥 聡史, 本城 正憲, 塚﨑 光
    原稿種別: 原著(研究論文)
    2026 年28 巻1 号 p. 26-39
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/23
    [早期公開] 公開日: 2026/04/14
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    電子付録

    2021~2024年にかけて,国内外のBrassica rapa(ハクサイ類)190品種・遺伝資源を用いて,盛岡市での早春まき作型における晩抽性と各BrFLC遺伝子座の遺伝子型を調査した.試験年次によって非抽苔の品種・系統数は変動するものの,出蕾日・抽苔日の年次間相関はいずれの組み合わせでも高かった.‘つけな中間母本農2号’が有するBrFLC2BrFLC3の晩抽性対立遺伝子を有する品種・系統は,本中間母本の素材である大阪白菜遺伝資源系統ならびに中間母本を利用して育成された品種・系統に限られていた.これに対して,BrFLC1の一塩基多型を識別するDNAマーカー分析では,早抽型,晩抽型とこれらのヘテロ型が検出された.品目によって遺伝子型の分布に違いが見られ,ほとんどのカブ品種・系統では,晩抽型のBrFLC1遺伝子型を示した.2022年と2023年の試験では,‘つけな中間母本農2号’が有する晩抽性対立遺伝子の効果を除外した場合,BrFLC1の晩抽性の遺伝子型を示す品種・系統は,早抽性ホモ型およびヘテロ型の遺伝子型を示す品種・系統より有意に晩抽性を示した.この結果は,B. rapa全体だけでなく,ハクサイ品種・系統のみのデータにおいても同様であった.国内のハクサイ品種においては,晩抽性を付与するためにはBrFLC1の晩抽性対立遺伝子を活用する一方で,それ以外の作型向けには,BrFLC1の対立遺伝子より一般形質やF1組み合わせ能力等を重視していることが推察された.

原著(品種育成)
  • 小林 麻子, 冨田 桂, 町田 芳恵, 中岡 史裕, 林 猛, 田野井 真, 清水 豊弘, 両角 悠作, 酒井 究, 渡辺 脩斗, 渡辺 和 ...
    原稿種別: 原著(品種育成)
    2026 年28 巻1 号 p. 40-48
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/23
    [早期公開] 公開日: 2026/02/18
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    電子付録

    日本国内の主食用米の需要が低迷する一方で,気候変動や社会情勢により米の生産や供給が不安定になる事象も起きている.そのような中,水稲作付面積は減少傾向にあり,生産性の向上には多収品種の導入が不可欠である.また,日本農業の持続的な発展のためには,米の輸出拡大は重要な課題である.著者らは,多収と良食味性を兼ね備え,輸出にも向く水稲品種「シャインパール」を育成した.「シャインパール」は2009年,中晩生で多収,良質な「西南136号」(後の「なつほのか」)を母,早生で良食味の「越南227号」を父として人工交配した組合せから育成し,2022年4月に品種登録出願を行った.「シャインパール」は福井県では“中生”に属し,「コシヒカリ」より稈長は22 cm短く,千粒重は2.5 g重く,1.9 mmで篩った玄米重は標肥区で「コシヒカリ」対比23%,多肥区で「イクヒカリ」対比4%多収である.玄米のタンパク質含有率および白米のアミロース含有率は「コシヒカリ」並み,食味官能試験における総合評価は「コシヒカリ」と同等で,香港およびシンガポールの実需者からも高評価を受けている.倒伏抵抗性は“強”であるが,葉いもちおよび穂いもち圃場抵抗性はいずれも“やや弱”であるため,栽培上は注意が必要である.「シャインパール」は2024年度に福井県でおよそ880トンが生産され,全量が輸出された.輸出用米は転作作物として扱えることから,水田機能を維持しながら,多収で生産コストを低減できる「シャインパール」を転作体系に組み込むことで,福井県内の安定した水田農業経営の実現に資することが期待される.

解説記事
  • 西尾 善太
    原稿種別: 解説記事
    2026 年28 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/23
    [早期公開] 公開日: 2026/02/07
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    電子付録

    ウクライナは肥沃な黒土とステップ気候に恵まれ,欧州を代表するコムギ生産国として世界の食料供給を支えてきた.日本のコムギ育種においても,ウクライナの遺伝資源は極めて重要である.代表例が,2009年に育成され,現在国内で最も多く栽培されているパン用コムギ「ゆめちから」である.本品種は米国系統「KS831957」と北海道の「札系159」,「キタノカオリ」を交配して育成されたが,「KS831957」の親であるウクライナの「Odesskaya 51」が縞萎縮病抵抗性や優れたパン品質をもたらした.また,19世紀に北米へ導入されたウクライナ原産の「Turkey Red」は,日本の「農林10号」や北海道主要品種の育成に貢献している.ウクライナのコムギ育種は19世紀末の帝政ロシア期に始まり,ソ連時代には「Mironovskaya 808」などの優良品種を育成した.一方で,ルイセンコ学説による研究の停滞やホロドモールの悲劇など,政治体制の影響も大きかった.独立後は国立農業科学アカデミー(NAAS)が研究を主導し,耐寒性,乾燥耐性,高品質を兼ね備えた品種開発を継続している.しかし,2022年以降の戦争で生産量は大きく減少し,研究機関も被害を受けている.戦争や気候変動が続く今,ウクライナと日本を結ぶコムギ育種の絆は,持続可能な食料生産の未来を考えるうえで重要な示唆を与えている.

特集記事 2025年第66回シンポジウム(シンポジウム・ワークショップ)報告
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