育種学研究
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原著(研究論文)
  • 山川 博幹, 三角 将洋, 川原 善浩, 水林 達実
    原稿種別: 原著(研究論文)
    2025 年27 巻2 号 p. 127-140
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2025/12/18
    [早期公開] 公開日: 2025/06/19
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    電子付録

    栽培イチゴ(Fragaria × ananassa)は四組の同祖染色体よりなる異質八倍体種であるため,育種形質に連関するゲノム領域の特定が困難であり,DNAマーカーによる優良個体選抜の効率化が阻まれている.本研究では果肉色と出蕾期早晩性について,高次倍数体向けに開発されたpolyploid QTL-seq法を適用し,量的形質遺伝子座(QTL)の同定とDNAマーカー開発が可能か検証した.異質倍数体種では配列が酷似する同祖染色体どうしをそれぞれ区別した遺伝解析が必要であるが,ショートリードのマッピング後でDepth 40以上かつSNP-index 0.40~0.64を満たす2アレル型多型の抽出により,各同祖染色体が固有に保持する多型を選択し利用したQTL解析が可能となる.果肉色が淡紅色として知られる品種「さちのか」と果肉色が白色として知られる品種「恋みのり」の交配後代F1世代において,果肉色が白色から赤色まで多様な表現型を示す個体が出現した.「恋みのり」参照ゲノム配列を用いて本法を適用したところ果肉色を赤色化するQTLを3つ同定し(「さちのか」由来chr1-4とchr2-3,「恋みのり」由来chr6-2),3つのDNAマーカーをすべて保持する個体を選抜することで,赤い果肉をもつ個体を92%の高頻度で選抜が可能となった.また,極早生性品種として知られる「かおり野」と相対的に晩生な品種「恋みのり」の交配後代F1世代では多様な出蕾時期を示す個体が出現した.同様に本法の適用により,早生化QTL(「かおり野」由来chr2-3)と,早生化効果を解除する脱早生化QTL(「恋みのり」由来chr3-1)を同定し,前者に対するDNAマーカーを保持し,後者に対するDNAマーカーを保持しない個体を選抜することで,90%の高頻度で早生個体の選抜が可能となった.以上のように,異質倍数性作物においてもpolyploid QTL-seq法による迅速なQTL同定とDNAマーカー開発が可能であることが示された.

  • 吉田 英樹, 渡辺 脩斗, 坂 紀邦, 菅波 眞央, 松岡 信, 小林 麻子
    原稿種別: 原著(研究論文)
    2025 年27 巻2 号 p. 141-149
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2025/12/18
    [早期公開] 公開日: 2025/10/03
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    電子付録

    ゲノム情報は非常に大きく複雑であるため,多型情報そのままでは全容を理解することは困難である.そこで著者らは,2つのイネ系統のゲノムを「日本晴」をベースに比較し,多型をゲノム上に位置づけて図として可視化する手法「ゲノム塗り絵」を開発した.ゲノム塗り絵はPythonおよびRで作成したプログラムで,特定の2系統の多型情報を含むVCF(Variant Call Format)ファイルをもとに多型を可視化し,比較することを目的に作成したプログラムである.ゲノム領域は染色体を模した長方形に,多型を異なる色の線として表現する.ゲノム塗り絵を用いることで,同質遺伝子系統や準同質遺伝子系統における目的遺伝子の置換領域や遺伝背景の残存領域の確認をより正確に行うことができた.また,系譜間でゲノム塗り絵を比較することにより,特定の遺伝子や遺伝領域の系譜間での伝達のされ方を容易に理解することが可能であった.さらに,系統どうしのゲノム的関連性を解析することにより,系統どうしの新たな類似性や系譜上の関連性を見つけ出すこともできた.以上のことから,ゲノム情報を総体として可視化できるゲノム塗り絵は,全ゲノムデータをイネ育種家がより手軽に育種選抜や品種評価に利用するために,またイネ遺伝学者や分子生物学者がゲノム情報を理解するために役立ち,複雑なゲノムデータと育種などの実用的な応用との間のギャップを埋めるものである.

  • 權 娟大, 鐘ヶ江 弘美, 後藤 明俊, 松下 景, 林 武司, 米丸 淳一, 菊井 玄一郎, 矢野 昌裕
    原稿種別: 原著(研究論文)
    2025 年27 巻2 号 p. 150-158
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2025/12/18
    [早期公開] 公開日: 2025/09/30
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    電子付録

    作物の交配育種においては,交配親品種のハプロタイプブロックの新たな組み合わせによって新品種が生み出されている.このハプロタイプブロックの組み合わせをハプロタイプとして可視化できれば,交配組み合わせを選定する上で重要な情報となり得る.本研究では,国内で開発された147のイネ近代育成品種・系統のゲノム塩基配列情報を利用して多種類のハプロタイプブロックのハプロタイプを定義し,系譜情報を基にハプロタイプブロックの祖先品種からの伝達を画像イメージとして確認できるハプロタイプ可視化ツールを作成した.一塩基多型(SNP)情報を基に,多収品種「あきだわら」のハプロタイプを定義し,147品種・系統との異同を明らかにすることができた.さらに,「あきだわら」の系譜上の品種・系統のハプロタイプの異同を基に,祖先品種からのハプロタイプブロックの伝達の流れを明らかにし,系譜上の日本型品種のハプロタイプブロックの違いを区別することができた.また,ハプロタイプブロックの比較によって,直近の親品種間で生じる染色体の組換え領域の推定が可能になった.本可視化手法は,育種母本の選定や交配計画において重要な情報を提供し,新たな品種・系統の開発にも貢献することが期待される.

原著(品種育成)
  • 伴 雄介, 加藤 啓太, 伊藤 美環子, 德力 望, 中垣 裕作, 廣瀨 正義, 川口 謙二, 池田 達哉, 高田 兼則, 谷中 美貴子, ...
    原稿種別: 原著(品種育成)
    2025 年27 巻2 号 p. 159-171
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2025/12/18
    [早期公開] 公開日: 2025/10/10
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    パン用コムギ品種は,製パン性を十分に発揮するために高蛋白質含有率であることが求められる.さらに高蛋白質含有率のパン用コムギは製パン用途だけでなく,醤油醸造用としても使用される.醤油の品質にはうまみの元となる蛋白質が大きな影響を与えるため,蛋白質含有率が高いことが醤油醸造用の原料コムギとして非常に重要な特性であり,西日本地域においても製パンだけでなく醤油醸造にも利用可能な高蛋白質含有率のコムギ品種が実需者から求められてきた.また近年,西日本地域では,暖冬年での幼穂の凍霜害が問題となっているため,秋播性がそのリスク低減に重要な形質となっている.そこで,これらの要望に応えるため品種開発を進め,優れた栽培性を持ち,高蛋白質含有率で製パン性・醤油醸造適性に優れる秋播性のコムギ品種「たつきらり」を育成した.「たつきらり」は西日本地域に適応する通常アミロースタイプの製パン・醸造用品種で,秋播性を有し春先に幼穂が凍霜害を受けるリスクが低い.また,短稈であるため倒伏に強い.「たつきらり」は「せときらら」より原粒の蛋白質含有率が高く,小麦粉生地物性が強く,製パン性が「せときらら」より優れる.醤油醸造適性は現在兵庫県で栽培されている「ゆめちから」と同等で,淡口醤油の醸造適性が高いと評価された.「たつきらり」はパン用・醤油醸造用品種として,兵庫県を中心に普及し,淡口醤油醸造をはじめとする地域産業に貢献することが期待される.

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