抄録
圃場抵抗性の異なる5つのテンサイ自殖性O型系統の親および片側ダイアレル交配したF1を用い,黒根病の圃場抵抗性に関するダイアレル分析を行った.2年間にわたり同じ実験計画のもとに抵抗性検定を実施した.両年の分析結果は概ね一致し,ダイアレル分析における分散分析では,a項(相加効果)ならびにb項(優性効果)は1%水準で有意であった.次に,(Vr,Wr)グラフを用いて分析の妥当性を調べたところ,2004年はVrとWrの一次回帰式の傾きが1に近く,相加・優性モデルに適合したが,2005年は傾きが0.5と小さく,エピスタシスの存在が疑われた.そこで,回帰直線から離れた1系統(「NK195」)の系列を除き,4系統で分析しなおしたところ,回帰式の勾配は1に近くなり,相加・優性モデルに適合した.広義の遺伝率(h2B)は,両年とも約0.95,狭義の遺伝率(h2N)は2004年の実験では0.66,2005年では0.83と推定された.分析の結果,優性分散(H1)に対し相加分散(D)が大きく,平均優性度(√H1/D)2004年では0.776,2005年では0.523と不完全優性を示した.優性対立遺伝子の平均的作用方向(h)はいずれも負値を示し,発病指数が低下する方向,すなわち,抵抗性の強い方が優性であった.これは,一代雑種育種を基本とするテンサイでのF1品種育成に有利な結果である.