育種学研究
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原著
古木の形態形質およびRFLP分析によるカキ品種「西条」の均一性の検証
尾山 圭二吉崎 司前重 道雅倉橋 孝夫吉原 利一猪谷 富雄
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2007 年 9 巻 2 号 p. 47-53

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抄録

カキ品種「西条」は長い栽培の歴史のある在来品種である.「西条」として栽培されている樹には遺伝変異があり,系統と呼ばれている.これらの変異が枝変わりによるものか実生によるものかについては明らかでない.本研究では,果実成熟関与遺伝子であるエチレン受容体(ETR,ERS)遺伝子,ACC酸化酵素(ACCO)の一部分をプローブに用い,カキゲノムDNAの制限酵素処理に EcoRI,HindIIIを用いたRFLP分析により「富有」等のカキ13品種間差異を解析した.その結果,枝変わり品種を除く10品種について異なるバンドパターンが得られ,品種間差異を区別できた.島根県農業技術センターで外観的特徴に基づき分類されている出雲型,石見型,久手型,日御碕型,A型およびB型の「西条」6系統は,ETRと EcoRIの組み合わせにおいて日御碕型,石見型,出雲型が同一のバンドパターン,A型,B型が同一のバンドパターンを示し,久手型は,その他5系統のバンドパターンとは異なる3つのタイプに分類することができた.中国地方各地に散在する「西条」と呼ばれている15地点の古木個体は,島根県農業技術センターで分類されている「西条」6系統と比較した結果,広島県高宮町の古木個体を除く14地点の古木個体が日御碕型,石見型,出雲型と同一のバンドパターンを示し,均一性が確認された.この14地点の古木個体は「西条」の原型である可能性が高く,推定樹齢からおそらく室町時代から江戸時代にかけて接木による栄養繁殖が行われ各地に広められたと推測された.なお,高宮町の古木個体は,ほとんどのプローブとプライマーの組み合わせにおいて原型の「西条」とはバンドパターンが異なっており,果実の形態形質が「西条」の特徴と異なることから「西条」とは別品種であると示唆された.また,このRFLP分析により日御碕型,石見型,出雲型は原型「西条」からの栄養繁殖,A型,B型は実生由来の可能性が高いが極めて近縁な系統,久手型は実生由来または他品種が「西条」として栽培された系統である可能性が示唆された.

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© 2007 日本育種学会
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